力率・有効電力・無効電力・皮相電力。
交流を送る時に、どのくらい電力を効率良く送ることができるかを表す時に出てくる言葉です。
交流を理解するにはこの4つがどのようなものなのかを理解することは非常に大切になってくるのですが、とても理解するのが難しいのがこの4つでもあります。
そこで今回は、可能な限り分かりやすくこの4つがどのようなものなのかを例えてみました!
数式はなるべく使わず、イラストを見ただけでそれぞれがどのようなものなのか直感的に分かるように記事を書きましたので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね(^^)
目次
分かりやすく例えてみた!
それでは早速ですが、力率・有効電力・無効電力・皮相電力を分かりやすく例えるとどのようになるかをお伝えします。
こちらです。
- 有効電力=電車の乗客の人数
- 無効電力=電車の乗務員の人数
- 皮相電力=電車の大きさ
- 力率=電車の中の乗客の割合
このような感じです。
有効電力は、電車の中いる乗客の人数です。電車に乗って電源から負荷に移動し、実際に負荷で使われるエネルギーです。
無効電力は、電車の中にいる乗務員の人数です。乗客である有効電力を滞りなく運ぶために、電源と負荷の間を往復しています。
皮相電力は、有効電力と無効電力が乗っている電車の大きさです。こちらも有効電力を運ぶため、電源と負荷の間を往復します。
力率は、電車に乗っている人の中で、乗客である有効電力の割合です。力率が高いほど、より多くの乗客が乗っているということになります。
ただ、文字だけだとまだ良く分からないと思いますので、次の章からはイラストを用いながらさらに詳しく説明していきますよ。
有効・無効・皮相電力とは?
この章では、有効電力・無効電力・皮相電力について詳しく説明していきます。
まずは、先ほどの章でご紹介した例えをイラストにしてみました。
有効電力が乗客、無効電力が乗務員、皮相電力が電車ですね。
そして、左側には発電所などで電力の供給元となる電源駅が、右側には電力を使う負荷駅が見えます。
有効電力
ここからは、それぞれの電力についてさらに詳しく説明します。
まずは、有効電力さんに自己紹介をしてもらいましょう。
有効電力さんの自己紹介
このように、有効電力は発電所で生まれて工場や家庭などへ送られ、電灯を光らせたりモーターを動かしたり、様々な形で使われます。
実際に負荷で消費される電力となるので、「有効電力」と呼ばれています。
そして、有効電力の単位は「W(ワット)」で、これは家電製品の消費電力を表す時などに良く使われています。
※単位「W(ワット)」については別ページで詳しくお話していますので、興味のある方はこちらにも遊びにきてくださいね。
無効電力
次は、無効電力さんの自己紹介です。
無効電力さんの自己紹介
無効電力は発電所と負荷の間を行ったり来たりしていて負荷では消費されない電力なので、「無効電力」と呼ばれています。
「無効電力」というといかにも無駄な電力といったイメージを抱いてしまいますが、実は名前ほど無駄な訳ではありません。
有効電力を安定して発電所から負荷へと届けるためには、ある程度の無効電力の存在が不可欠なのです。
このように、皮相電力という電車の乗務員となって、安全安心に有効電力を負荷へお届けするのが無効電力の最大の仕事です。
そして、無効電力の単位は「var(バール)」です。
ワットと名前は違いますが、親戚みたいな単位で、バールもワットと同じく電力を表します。
皮相電力
最後は、皮相電力さんの自己紹介です。
(この世界では、トー○スやチャギ○トンの世界のように、電車もどうやらお話できるみたいです)
皮相電力さんの自己紹介
このように、皮相電力は有効電力と無効電力を乗せている電車の大きさになります。
実際に電力を送る時にはこの皮相電力の状態で送られるので、発電所や送電設備はこの電力の大きさに耐えられるように設計されています。
そして、皮相電力の単位は「VA(ボルトアンペア)」です。
こちらもワットの親戚の単位で、電力を表す単位です。
これまでに出てきた電力の単位、W・var・VAは、すべて「電圧×電流」で計算される単位です。
そのため、単位の名前は違えど、単位の次元は3つとも同じで「V(ボルト)×A(アンペア)」です。
単位の次元が同じなので、この3つ単位が使われていたら、同じ単位の数値としてそれぞれ計算することが可能です。
電力の送られ方
前章ではそれぞれの電力がどのようなものなのかについてお話しましたが、この章では、電力が実際にどのようにして送られているのをイラストを用いて説明していきたいと思います。
電源駅で有効電力を乗せる
まずは、電源駅で乗客である有効電力を皮相電力の電車に乗せます。
有効電力は、発電所などで燃料を燃やした時のエネルギーなどから生み出されます。
このとき乗務員である無効電力は、一度電車から降りて丁寧に有効電力をお出迎えします。
電源駅にて
電源駅で乗客である有効電力の乗車が完了したら、いざ、負荷駅に向かって出発です!
電車に乗って負荷駅に進む
電源駅を出発したら、目的地である負荷駅に向かって電車は走ります。
電車の中を見てみると、運転手としてがんばっている無効電力と、楽しそうに乗っている有効電力がいるのが分かりますね。
行きの電車内にて
電車は順調に、負荷駅に向かって進んでいます。
負荷駅で有効電力を下ろす
長い旅路も遂に終点!負荷駅に到着です。
負荷駅で、有効電力は下車します。
ここでも、丁寧に乗客である有効電力を送り出すため、無効電力は一度電車から降りてお見送りします。
負荷駅にて
無事に有効電力のお見送りが終わったら、無効電力はまた電車の中に乗り込みます。
無効電力だけでまた電源に戻る
負荷駅に有効電力を送り届けたあとは、次の有効電力をお迎えに行くため、無効電力はまた電車に乗って電源駅に戻ります。
このとき、乗客は乗っていないので、電車は回送列車の状態になっていますね。
帰りの電車内にて
そしてまた電源駅へ戻ると、新たな有効電力に電車に乗ってもらいます。
以上、この繰り返しで発電所から負荷へとエネルギーである有効電力を送っているのでした。
力率とは?
ここからは少し話が変わって、力率について詳しくお伝えしていきます。
力率の定義
まずは、力率の定義からお伝えしたいと思います。
こちらです。
力率=有効電力/皮相電力
定義の式を見たら分かる通り、力率とは、皮相電力の中に入っている有効電力の割合のことを指します。
そしてこの力率は、0~100%の間の数値になります。
ここからは、力率の違いによる電力の状態について、さらに詳しくみていきます。
力率100%
力率100%は、皮相電力の電車の中に乗っているのが有効電力だけの状態です。
乗務員が全く乗っておらず、自動運転状態でとても効率が良いですね!
ただ、電源が直流であれば力率100%で有効電力を送ることができるのですが、交流の場合はその性質上どうしても力率100%で送ることはできません。
そして発電所から送られてくる電気は交流なので、力率100%にはできないのですね。
※力率を100%にできないのに、なぜ交流で電気が送られているのかについては別ページで詳しくお話していますので、興味のある方はこちらにも遊びにきてくださいね。
力率の良い状態
力率の良い状態というのは、有効電力を安定供給するのに適切な量の無効電力が含まれている状態です。
例えば、力率80%だとこのような状態になります。
皮相電力の電車に、8割ほど有効電力が乗っている状態です。
このくらいの状態が、効率良くかつ安定に電力を送るためにちょうど良い力率となっています。
力率の悪い状態
力率の悪い状態というのは、皮相電力に乗っている無効電力の割合が、必要以上に増えている状態です。
例えば、力率40%だとこのような状態になります。
こうなると、1両当たりに乗ることのできる有効電力の量が減ってしまうので、同じ量の有効電力を送るためにはよりたくさんの電車を走らせなければなりません。
すると、たくさん電車が走っても大丈夫なより強固な設備を作らなければならず、無駄なお金が掛かります。
そのため、電気を送る時には力率が悪くなっていないか常に気を配る必要があります。
力率0%
力率0%の状態は、電車の中にもはや有効電力が全く乗っておらず、乗務員である無効電力だけが乗っている状態です。
普通はこのような状態になることはありませんが、理想的な回路で、負荷がコイルのみ、もしくはコンデンサのみの場合に限りこのような現象が起きます。
この時、負荷では全く電力が消費されず、電源でも全く電力が供給されず、無効電力がただ単に電源と負荷を行ったり来たりしている状態になります。
力率改善
前章でお話したように、電力会社は必要以上に無効電力が増えることを嫌います。
そして、無効電力が増えてしまう原因は、負荷駅で有効電力を下ろす時にあります。
なぜかというと、電気を使う時の負荷の種類によっては、有効電力を下ろす時によりたくさんの無効電力がいるからです。
しかし、電力会社としては、皮相電力の電車に無効電力をたくさん乗せたくはありません。
そこでどうするかというと、負荷駅に乗務員を駅員として常駐できる場所を作ってもらって、有効電力を下ろすために必要な無効電力を負荷駅に留めておけるようにします。
こうすることにより、負荷駅で下ろすために必要な無効電力の大部分を負荷駅に留めておくことができ、皮相電力の電車に無駄な無効電力を乗せなくても済むようになります。
そして、この無効電力の駐留所のことは「進相コンデンサ」と呼ばれており、電力の効率アップに一役買っています。
おっと、電気を送る電力会社と、電気を使うお客さんから、なにやら会話が聞こえてきましたよ。
電力会社とお客のやり取り
乗客と乗務員の秘密の関係
最後の章では、これまでお話してきた乗客と乗務員の秘密の関係をあなたにお伝えしたいと思います。
その秘密の関係とは、こちらです。
乗客である有効電力と乗務員である無効電力は、一部車内のスペースを共有することができる。
これはどういうことかと言いますと、例えば乗員乗客あわせて定員(皮相電力)100人の電車があったときに、「乗客(有効電力)80人・乗務員(無効電力)60人)」といった乗り方ができるということです。
電車の定員は100人、乗員乗客の人数は140人になるので、40人分ほど乗客・乗務員が車内スペースを共有している計算になります。
これをイラストにすると、こうなります。
皮相電力100W・力率80%の交流電力のイメージ図です。(簡略化のため、全ての電力の単位をWで表しています)
ちなみに、無効率とは力率の反対で、皮相電力のうちの無効電力の割合です。
このように、有効電力と無効電力が40Wほど重なり合っています。
なぜこのようなことが起こるかというと、「交流は波の性質をもっているから」となります。
波の性質と言えば、そう、干渉ですよね。一緒になると、強め合ったり弱め合ったりします。
なので、有効電力と無効電力は一部重なり合うことができるのです。
そして、有効電力・無効電力・皮相電力は、波らしく単純な足し算ではなく、下記の数式のルールに従って重なり合います。
(皮相電力)2=(有効電力)2+(無効電力)2
このような関係になるので、皮相電力が100Wのときの各力率における有効電力と無効電力の割合は、下記の表の通りとなります。
まとめ
以上で、力率・有効電力・無効電力・皮相電力についての話を終わります。
まとめると、下記の通りです。
- 有効電力は、実際に負荷で消費される電力。例えると、電車の乗客。
- 無効電力は、電源と負荷を往復する電力。例えると、電車の乗務員。
- 皮相電力は、有効電力と無効電力の合計。例えると、電車の大きさ。
- 無効電力は、交流電力の安定供給には必要不可欠。
- ただし、必要以上に増えすぎると、皮相電力が大きくなって設備に無駄が生じる。
- 無効電力が大きくなる原因は、負荷にある。
- 負荷では、無効電力が大きくならないように、場合によっては「進相コンデンサ」を設置する。
- 有効電力と無効電力は、波としての性質を持っているので重なり合うことができる。
- そのため、合わせるときは単純な足し算ではなく、波の計算式に従う。
非常に分かりにくいこれらの電力ですが、少しでもどのような電力なのかイメージして頂けましたでしょうか?
有効電力・無効電力・皮相電力がそれぞれどのようなものなのか想像しながら電気を見てみると、発電所から送られてくる電気がより面白く感じるようになるかもしれませんね(^^)
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