三相交流。
電気の送電方法として、世界中で広く採用されている方法です。もちろん、わが国日本でもこの方法で電気が送られています。
しかしながら、いざ三相交流と言われても、どんな仕組みなのかイメージしずらいものでもありますよね。
普通の交流といったい何が違うのかも、気になるところです。
そこで今回は、三相交流がどのようなものなのかを分かりやすくまとめてみました!
合わせて、単相交流との違いや三相交流が生まれた経緯、三相交流の使われ方などについてもお話していますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね(^^)
目次
三相交流を一言で
それでは早速ですが、まずは三相交流とはどのようなものか一言でお伝えしたいと思います。
こちらです。
電気を送る方法の一つで、最も設備が少なく経済的に電気を送ることができる仕組み。3つの単相交流電源を、3本の電線で送ることができる。
そうなのです。
この通り三相交流は、電気を可能な限り少ない設備で経済的に電気を送るために編み出された送電方法なのです。
普通は3つの単相交流電源を送ろうと思ったら、行きと帰りで6本の線が必要になるのですが、それをたった3本の線でやってしまうのが三相交流の素晴らしいところです。
三相交流が生まれた経緯
前章では三相交流を一言でお伝えしましたが、ここからは、単相交流電源との違いや三相交流が生まれた経緯などを、イラストを用いながら詳しくお伝えしていきます。
単相交流回路
交流の電源を送ろと思ったときに、一番簡単で最初に思いつくのが、この単相交流回路です。
発電機と負荷の間に行き(赤色)と帰り(水色)の2本の電線があって、一つの回路になっています。
何の変哲もない、ごく普通の回路です。
※交流電源がどのようなものなのかについては別ページで詳しくお話していますので、興味のある方はこちらにも遊びにきてくださいね。
単相交流×3
そんな交流電源ですが、より多くの電気を送りたいと思ったら、発電機を増やして回路も増やす必要があります。
例えば、1つの単相交流の3倍の電気を送ろうと思ったら、3つの単相交流が必要になります。
こうすると、電気を3倍にすることができましたが、電線の数もそのまま3倍になります。
そこで人類は、もっと少ない設備で効率良く電気を送ることができないかと考え始めます。
帰りの線を一本にする
あれこれと考えた末に辿り着いたのが、帰りの線を一本にまとめることでした。
行き側は電気を使用する負荷のために電線を減らすことはできませんが、帰り側の線は一つにまとめてしまっても問題は無いので、1本にしても大丈夫だったのです。
そうすると、もともと6本の電線が必要だったところが、4本の電線で済むようになりました。
帰り線の電流を常に0にして、不要にする
さらにもう一歩進んで、3つの発電機で作る交流電源の位相を120°ずらす方法が考え出されました。
この120°位相をずらした3つの交流電源が、実は三相交流です。
そしてその電圧波形は、このようになります。
こうすると、3つの発電機によって生み出された電圧の瞬時値を足したときにどこでもゼロになります。
このようにして電気を送ると、先ほど出てきた帰りの線に掛かる電圧は常に0になるので、全く電気が流れなくなります。
全く電気が流れないということは、その電線があってもなくても特に支障は無いということになるので、帰りの線は不要ということになります。
そして生み出されたのが、3つの交流を3本の行き側の電線だけで送ることができる、この三相交流回路です。
上のイラストを見ても分かる通り、三相交流では3つの交流電源をたった3本の電線で送ることができます。
単純に送ろうと思ったときには6本の電線が必要だったので、電線の数が半分になっていますよね!
ということは、より少ない設備で電気を送ることができるので、とても経済的です。
そのため、三相交流は世界中の送電方法として、広く普及していったという訳です。
三相交流を使う時の注意点
このような便利な三相交流ですが、一つだけ気を付けないといけないことがあります。
それは、3つの負荷をなるべく均等になるように使うことです。
三相交流では、3つの単相交流電源を足し合わせた時に電圧が0になることを利用して帰りの線を省いていますが、負荷のバランスが偏ると、電圧を足した時にゼロにならず不具合が生じてしまうのです。
そのため、電力会社では各相の負荷を常に監視していて、負荷のバランスが基準値以内に収まっているか常にチェックしています。
二相および四相以上では無い理由
ここまで読んでくださったあなたは、もしかしたらある一つの疑問を感じていらっしゃるかもしれません。
それは「なぜ三相なのか?」という疑問です。
実は、二相や四相ではなく、三相なのにはちゃんと理由があります。
最後の章では、その理由についてお伝えしていきます。
二相交流ではない理由
三相交流がお互いに120°ずつ波形をずらした単相交流ですが、単相交流を180°ずらせば二相でも同じことができます。
そうすると、2本の電線で2倍の単相交流が送れるようになりますが、電線が2本であるならば単相交流の電圧を2倍にするだけで電力を2倍にできるので、わざわざ二相交流にしても設備が複雑になるだけでメリットが無いのです。
また、三相交流にはただつなぐだけでモーターを回すことができるというとても大きなメリットがあるのですが、単相交流や180°ずれの二相交流ではつなぐたけではモーターは回りません。(モーターを回すためには、コンデンサなど追加部品が必要になります)
二相交流でモーターを自動で回すためには位相差を180°ではなく90°にする必要がありますが、三相交流で立派にモーターを回せるほか、電圧の合計が0にはならなくなるので、わざわざそのような電気を作る必要もありません。
このような理由で、二相交流は採用されないのです。
多相交流(四相以上)ではない理由
こちらも同じく、90°位相をずらした四相交流、72°位相をずらした五相交流、60°位相をずらした六相交流を作れば電圧の合計を0にできるので、三相交流と同じく往きだけの電線で電気を送ることができます。
しかし、電線の数を見てみると、三相で3本、四相で4本、五相で5本、六相で6本と、電源1に対して電線1本という比率は変わりません。
そして比率は変わらないのに、相の数が増えれば増えるほど、設備はどんどん複雑になっていくばかりです。
設備が複雑になると、当然のことながら設備に掛かるお金が増えて経済的に電気を送ることができなくなります。
このような理由で、三相よりも相数が大きい多相交流は採用されないのです。
まとめ
以上で、三相交流についての話を終わります。
まとめると、下記の通りです。
- 三相交流は、最も経済的な電気の送り方
- そのため、世界中で広く普及している
- 3つの単相交流を、行きだけの3本の電線で送ることができる
- 3つの電源の電圧を足すと、常に0になる
- 一般住宅などの小口需要家は、3本の線のうちの1本から単相交流を取って使う
- 大工場などの大口需要家は、三相交流の3本の線をそのまま引き込んで使う
- 三相交流は、つないだだけでモーターを回すことができる
- 三相交流の各電源の負荷は、なるべく均一にする必要有り
- 電力会社は、負荷のバランスを常にチェックしている
どのようなものなのかいまいちイメージしづらかった三相交流ですが、これですっきりと理解することができました!
これから外で電線などを見た時に、三相交流で電気が送られていることを思い浮かべたりすると、ちょっと楽しくなるかもしれませんね(^^)
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