電流と電子の流れの向き違いとは!なぜ逆方向になってしまった?

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電流と電子の流れの向き。

もしかしらた、物理学の中で最もややこしいことの一つかもしれません。

なぜならば、今の物理学の定義によると「電流の正体は電子が一定方向に移動することだが、電流の方向と電子の移動する向きは逆」となっているからです。

はいっ?何かのとんちですか?一休さんでも呼んできた方が良いですか?という気分になってしまいます。

これを川の流れで例えたら、「川の流れの正体は水が高い方から低い方へと移動することだが、川の流れと水の移動する向きは逆」と言っているようなものです。

全く意味が分からないですよね。

私自身も中学校の理科でこのことを習ってとても混乱した記憶があるので、今回はなぜこんなことになってしまったのか徹底的に調べてみました!

このページでは、電流の向きと電子の移動する向きの違いと共に、なぜ逆になってしまったのかを分かりやすくお話していますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね(^^)

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電流と電子の流れの向き

それでは早速ですが、まずは電流と電子の流れの向きを確認していきたいと思います。

こちらです。

電流と電子の流れの向き!
  • 【電流】電気の+側から-側に向かって流れる
  • 【電子】電気の-側から+側に向かって流れる

分かりやすいように図にすると、下記のようになります。

電流と電子の流れ

やはり、電流と電子の流れの向きは逆になっているのですね!

そして導入文でも少しお話した通り、電流の正体は電子の流れであり、実際に電線の中を流れているのは電子だけです。

ならば、なぜ電流の定義は+側から-側に向かって流れるとなってしまったのでしょうか?

次の章からは、その謎について迫っていきます!

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逆方向になった理由

それではここからは、電流が電子の向きと逆方向に定義されている理由についてお話していきます。

まずはその理由を一言で表すと、こちらになります。

電流の向きが電子と逆な理由

電流が発見された当時(電子発見の約150年前)、何が流れているかまでは分からなかったので、とりあえず+から-に何かが流れていると決めたから。

そうなのです。

電流というものが存在しているのが分かってきたのが1750年くらいだったのですが、その時は何が流れているかまでは分からなかったのです。

なのでとりあえず、「どうも電流という電気の流れみたいなものがあるけど、何が流れているのかは良く分からないから、とりあえず+から-に何かが流れていることにしよう。」ということに決めたのです。

そして1900年になってからやっと電流の正体が電子であり、その電子は-から+に流れていることが分かったのです。

しかし、このときに電流の向きの定義は変わることなくそのまま引き継がれて、現在でも電流の向きは+から-方向に流れるという定義になっています。

そうすると、自然とある疑問が生まれてきます。

「1900年に電流の正体が電子の流れであることが分かったのに、なぜ電流の定義を変更して-から+に流れることにしなかったのか?」

という疑問です。

なぜ電流の定義は変更されなかったのでしょうか?

最後の章では、電流の歴史を振り返りながら、その点について更に深堀りしていきたいと思います!

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電流の歴史

それでは最後に、電磁気学の歴史の中でも特に電流にスポットを当てて、今なぜこのような電流の向きの定義になっているのかを探っていきます。

初めての電流の定義

18世紀(1700年代)に入ったころから、人類は本格的にこの世界に電気というものがあることに気づき始めます。

人類が最初に気づいた電気は静電気で、何か違う物同士をこすり合わせると、物を引き付ける不思議な力が生まれることに気づきました。

(小学生のころにやった、下敷きで頭をこすると髪が下敷きに吸い付くあの現象です)

それから、電気を貯めるライデン瓶というものを発明したり、科学者が実際に貯めた電気によって感電(超強力な静電気を受けたり)したりしながら、この力の正体を探っていきました。

また、その不思議な力には2種類あって、同じもの同士は反発するし、違うもの同士だと引き寄せあるうことも分かってきました。

そして1750年くらいになると電気の実態もだいぶ分かってきて、アメリカの物理学者「ベンジャミン・フランクリン」は電気を次のような特徴を持っているものだと提唱しました。

フランクリンの電気の考え!

  • 電気は1種類で、全ての物質が持っている
  • 電気は非物質的な流体である
  • その流体が過剰にあると+に帯電する
  • その流体が不足すると-に帯電する

上記のようなフランクリンの提唱は、当時発展していた電磁気学の実験結果と良く合っていたため、広く受け入れられるようになりました。

そして、いつ誰が決めたのかはっきりと記録に残っていませんが、初めての電流の定義は下記のようになりました。

初めての電流の定義

電流は、非物質的な流体である何かが、+に帯電しているものから-に帯電しているものに向かって流れている。

これは、+から-に流れると定義されている現在の電流の定義と全く同じですね。

しかし、フランクリンが電気の正体だといっている「非物質的な流体」が何なのかはこの時点では全く分かっていませんでした。

豆知識!ベンジャミン・フランクリン

18世紀に大活躍した、アメリカ建国の父と称えられている英雄。物理学者の他、政治家・外交官・実業家としても活躍し、万能人間と呼ばれていた。物理学者としては、雷雲に向かって凧を飛ばすという、現在ではほぼ自殺行為としか思えない実験をして雷が電気であることを証明したことで有名。

150年後に電子を発見!

こうして電流の正体が何かは分からないまま、約150年の月日が流れました。

しかし、電流の正体は分からなくても、この150年間での電磁気学の発展は目覚ましく、下記のような発明や発見がありました。

  • 静電誘導の発見
  • クーロンの法則
  • 電池の発明
  • 電流の磁気作用の発見
  • ビオ・サバールの法則
  • アンペールの法則
  • オームの法則
  • ファラデーの電磁誘導の法則
  • レンツの法則
  • ジュールの法則
  • フレミングの左手の法則

そしてこれらは全て、「電流は+から-に流れている」ということを前提にして組み立てられていったのです。

さらに驚くべきことに人類は、1880年ごろになると、まだ電気の正体が分かっていないのに商用電源の実用化までしてしまいました!

※商用電源の歴史については別ページで詳しくお話していますので、興味のある方はこちらのページにも遊びにきてくださいね。

直流と交流アイキャッチ

電気はとても便利だったので、あっという間に全世界に広がっていきました。

そしてこの時も、当然のように電流は+から-に流れるものとして全ての電気設備が作られていきました。

そのような感じで電磁気学の歴史が深まったり、商用電源の設備が世界中に広がっていく中、1900年ごろ、イギリスの物理学者「ジョセフ・ジョン・トムソン」によって遂に電子が発見されました!

電子が発見されると程なくして人類はようやく電流の正体が電子であることを知って、初めてフランクリンの言っていた「非物質的な流体」が何か分かったのです。

それと同時に、+から-に流れると思っていたその流体が実は逆で、-から+に向かって流れていることも知ってしまいました……。

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でも、電流の向きは変えないことにした

このように1900年代に入ると、電流の正体が電子であり、それが今まで考えられていた電流の向きと逆だったことが判明しました。

このとき電子を発見したトムソンは、電気の正体と本当の向きが分かった以上、電流の向きの定義を今までと逆にして、現実と合わせるべきだと思ったはずです。

しかしこの時すでに、上記の通り様々な法則がすでに「電流は+から-に流れている」ということを前提として作られていたので、電流の向きが逆になると、これらの法則を電流だけ向きを逆にしてまた作り直さないといけなくなります。

また、上記の通りもう電気は世界中で普及しており、電気設備が大量に作られていたため、電流の定義をいきなり変えたりすると、現場で大混乱が起こって誤配線による電気設備のトラブルや感電等の事故が多発する恐れがありました。

なので、電流の正体が分かったからといって、電流の定義を変えることはもはや不可能な状況に陥っていたのです。

おそらく当時、トムソンと他の科学者の間でこのようなやり取りが行われたのではないかと思います。(フィクションです)

 

トムソンと他の科学者のやりとり

トムソン
俺、電流の正体発見したよ!
トムソン
そしたら、流れている向きが逆だったんだよ!
トムソン
だから、電流の向き逆にしようぜ!
科学者A
えっ、今更そんなこと言われても・・・
科学者B
長い電磁気学の歴史の中で、ずっと電流はプラスからマイナスに流れることにしていたし・・・
科学者C
今まで見つかった法則を、全部反対にするのめっちゃめんどい!
科学者D
変更なんてされたら、電気の現場では大混乱が起きて危険すぎる・・・
科学者E
これは、いきなり電流の定義なんか変更したら大変なことになりますな。
科学者F
という訳でトムソンさん、申し訳ないけど電流の定義を変更するのは無理ですわ。

そして、21世紀になった現在でもこの定義が変わることは無く、電流の定義は電流の正体である電子の向きと逆のままで、物理学史上稀に見る現実に起きていることと正反対の定義になってしまっているという訳です。

まとめ

以上で、電流と電子の流れの向きの違いと、なぜ逆方向になってしまったのかについての話を終わります。

まとめると、下記の通りです。

  • 電流の正体は、電子の流れ
  • 電子は、-から+に向かって流れている
  • でも、電流は+から-に流れると定義されている
  • 電流の定義は、電子が発見される150年前に作られた
  • 150年後に電子が発見されて、電流と電子の向きが逆だったことが分かった
  • しかし、その150年間で電流は+から-に流れるものとして電磁気学は発展していた
  • さらに、電子が発見される前にすでに商用電源が世界中に広がっていた
  • なので結局、向きが違うことが分かっても定義を変えないことにした

電流と電子の向きが逆なのには、こんな理由があったのです。

初めて電気について具体的な提唱をしたベンジャミン・フランクリンも、まさか250年後の中学生を大混乱に陥れるきっかけになってしまったとは、夢にも思っていなかったでしょうね(笑)

私自身としてはちゃんと電流と電子の向きの定義を合わせて欲しいなーと思うのですが、特に電気設備の現場のことなどの話を聞くと、やはり変えるのは不可能なんだろうなと思います。

まあどちらにしろ、全世界でそう定義されている以上はそれを受け入れないと仕方のないことなので、電気の世界では電流は+から-に向かって流れることにして勉強をしていかなければならないのですね(^^)

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2件のコメント

私も70年もの間「何故反対なのか」と疑問に思ってきました。ラジオの「エミッター接地回路」では「コレクター側に負荷を繋ぐことの不思議さに悩んでいましたが、ようやく「すっきり解決」しました。

及川篤志さん
こんにちは、当ブログ管理人の星野なゆたです。
コメントありがとうございます!
電流と電子の向きがなぜ反対なのか、本当に不思議でしたよね。
ラジオのこと、かなりお詳しいんですね。
ご自身で作ったりされていたのでしょうか?
疑問解決のお手伝いができて、こちらも嬉しいです(^^)

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