エアコン。
夏や冬にお部屋を快適な温度にしてくれる、とても便利な電化製品ですよね。
こんにちは、地球温暖化の影響で夏が死ぬほど熱くなっている昨今、エアコンは単なる空調機器ではなく生命維持装置なのではないかと思い始めている当ブログ管理人の星野なゆたです。
エアコンの無い生活、今では考えられないですよね。暖房であれば石油やガスストーブなどいくらか変わりはありますが、冷やす方向となる冷房はエアコンしかできません。
地球温暖化の影響で夏が異常な暑さになっており、昼はエアコンを付けなけければ熱中症、夜は熱帯夜でエアコン無しでは暑すぎて眠れないといったようにエアコンの必要性はどんどん高まるばかりです。
そんなエアコンで気になることの一つに、いったいどうやって冷暖房を行っているのか?ということがあります。
リモコンのボタン一つ、ピっと押したら冷房も暖房も行ってくれる優れモノのエアコン、どうやったらこんなことができるのか気になることもあるかと思います。
そこでこのページでは、実は本業ではエアコンも扱っていて、エアコンのプロでもある星野なゆたが、エアコンの仕組みについて図解を用いて詳しくお伝えしていきたいと思います(^^)
目次
エアコンの仕組みの概要
それでは、早速ではありますがエアコンの仕組みをざっくりと説明したいと思います。
エアコンの仕組みを一言で説明すると、下記の通りです。
ヒートポンプという技術を使って、部屋の空気の熱を外に捨てることによって冷房したり、逆に外の空気の熱を部屋に送り込むことによって暖房したりして部屋の空調を行っている。
そう、エアコンは部屋の空気の熱を外に捨てたり、逆に外の空気の熱を部屋に送り込んで冷暖房を行っていたのですね!
しかし、ここである疑問が生まれます。
冷房の際は、部屋の中よりも外の空気の方が温度が高いです。また、暖房の時は逆で部屋の温度よりも外の空気の方が温度が低いです。
中学の理科で熱は温度が高い方から低い方へ伝わると習ったはずなので、外の空気とどうやって熱のやりとりをしているのかとても不思議に思います。
でも実際には冷えたり暖まったりしているのは、「ヒートポンプ」という技術がそれを可能にしているからです。
ここからはそんなヒートポンプとはどんな技術なのかと、超詳細なエアコンの仕組みについてお話していきます。
ヒートポンプとは?
ヒートポンプ、普段の生活ではなかなか聞きなれない言葉ですよね。この単語がお出ましすることはまずありません。
そこでまずは、エアコンの仕組みの詳細を説明する前にヒートポンプがどのような技術なかのというイメージについてお伝えしようと思います。
ヒートポンプの「ヒート」という単語は「熱」という意味なので、ヒートポンプは熱のポンプという意味になります。ポンプと言えば、水などの液体を運ぶ機械でおなじみですよね。
そして普通のポンプもヒートポンプも役割としては非常に似ているため、それぞれ比べながらヒートポンプについて説明します。
まずは、普通の水の場合。
A池とB池という池があり、B池はA池よりも高いところにあったとします。
この場合、A池の水をB池に移したいと思ったら、重力で水は高いところから低いところに流れるので、何もしないで自然に移すことはできないですよね。
しかしながら、下図のようにポンプを使ってみたらどうでしょうか?
ポンプを使ってA池の水をB池よりも高いところに汲み上げてやれば、晴れてA池の水をB池の水に移すことができますよね。
実は、ヒートポンプ技術もこれと全く同じよう形で熱の移動を行っています。
イメージとしては、このような感じです。
◆冷房の時
冷房の際は、部屋の空気の熱をヒートポンプで汲み上げて外の空気に捨てることにより、部屋の空気を冷やします。
◆暖房の時
暖房の際は、外の空気の熱をヒートポンプで汲み上げて、部屋の空気を暖めます。
このように、水の場合のポンプと同様にヒートポンプを使って熱を汲み上げて、本来移動するはずのない低い温度の空気から高い温度の空気の方へと熱を移動させているのですね。
ポンプで水を汲み上げるときに水の位置を高くしていますが、ヒートポンプで熱を汲み上げるときにはその温度を高くします。
こうやって、エアコンは冷暖房を行っていたのですね。
超詳細なエアコンの冷暖房の仕組み(構造)
前章ではヒートポンプ技術とはどのような技術なのかそのイメージについて説明しました。
そこでヒートポンプとはどういった技術なのかは分かったのですが、水のポンプと違って熱を汲み上げるって実際どうやってるのか、なかなかイメージしづらいですよね。
ここからは、ヒートポンプ技術をどのように使ってエアコンが冷暖房を行っているのか、超詳細に説明していきたいと思います!
まずは、分かりやすいようにヒートポンプ技術を使ってエアコンが冷暖房を行う仕組み(構造)を図にしてみました。
◆冷房の時の図
◆暖房の時の図
エアコンが冷暖房を行うためののヒートポンプ技術に必要な部品は、圧縮機・四方弁・膨張弁・室内熱交換器・室外熱交換器の5つです。
そしてこの5つの部品が一つの回路になっていて、その回路の中を熱を運ぶ役割をしている冷媒ガスが流れて熱を運んでいます。
この5つの部品の中の室内熱交換器に入ってきた冷媒ガスと部屋の空気を熱交換させて、エアコンは空調を行っているのですね。
各部品と冷媒の役割
それではここから、ヒートポンプに必要な各部品と冷媒の役割について、さらに詳しく説明していきます。
これを説明するときに、二人の人物「気体くん」と「液体ちゃん」に登場して頂きたいと思います。こちらです。
気体くんは、元気で活発な男の子、液体ちゃんは、おとなしくて優しい女の子です。
実は気体くん、液体ちゃんは同じ冷媒なのですが、熱エネルギーの大小によって気体くんになるのか液体ちゃんになるのかが変わります。
例えていうなら、らんま1/2のらんまみたいなものです。(昭和生まれなのがバレる)
そしてご覧の通り、熱エネルギーが大きいときは気体くんに、熱エネルギーが小さいときは液体ちゃんになります。
これは、例え気体くんと液体ちゃんが同じ温度であっても、気体くんの持っている熱エネルギーの方が大きいということを意味します。
それではこの二人の登場人物に出演してもらいながら、エアコンの部品の役割を説明していきます!
圧縮機
まずは、圧縮機です。
圧縮機はコンプレッサとも呼ばれており、エアコンの中に入っている冷媒を運ぶための心臓部となる部品です。
まさに人間の心臓と同じように冷媒ガスを流すためのポンプの役割を果たしています。
その働きをイラストにすると、下記のような感じになります。
圧縮機の入り口では、全ての役目を終えて帰ってきた冷媒がまた圧縮機に戻ってきます。
このときの冷媒は低温低圧の気体の状態で帰ってくるので、冷媒の中は全て冷たい気体くんで満たされている状態になっています。
そしてこの帰ってきた冷媒を圧縮機で圧縮して低圧の冷媒をまた高圧に戻します。
この過程は物理学で「断熱圧縮」と呼ばれている方法で圧縮を行われているのですが、この断熱圧縮を行うと、冷媒ガスの圧力が上がると同時に温度も上がるという現象が起こり、それを利用して、冷媒ガスを圧縮して圧力を高めると同時に、冷媒ガスの温度を上げています。
そのため、圧縮機からまた空調のために旅立って行く気体くんは、エネルギーたっぷり、しかもぎゅうぎゅうに詰まった状態になっています。
また、圧縮機で断熱圧縮を行う際に使った電力は、機械的なロスを除けば全て熱エネルギーに変わって冷媒ガスに移動します。
この熱エネルギーは暖房の時は有効に利用できますから、室内熱交で部屋を暖めるための熱として有効活用されます。
しかしながら、冷房の時は暖める方向となる熱エネルギーは使えませんから、室外熱交換器から不要な熱として一緒に捨てられてしまいます。
このように、ヒートポンプサイクルで冷暖房を行うと、圧縮機によって生まれた熱エネルギーが暖房の時には使えるけど冷房の時には使えないという現象が起こるため、暖房運転をしたときの方が冷房運転をした場合よりも圧縮機を動かす電力分ほど効率が高くなるという特徴があります。
四方弁
四方弁は、圧縮機から送られてきた冷媒ガスの流れを切り替えるための部品です。
通常、ヒートポンプは暖めるか冷やすかのどちらかしかできませんが、この四方弁で流れを切り替えることによって冷房と暖房の両方を可能にしているのです。
そして、四方弁の役割を表したのがこちらのイラストです。
圧縮機から送られてきた高温高圧の冷媒ガスを、冷房時には室外機の熱交に送り込み、暖房時には室内機の熱交に送り込めるようになっています。
このような切り替えができるので、四方弁があると冷房と暖房の両方ができるようになるのです。
放熱側熱交換器
放熱側熱交換器は、冷媒の熱を放熱するための熱交です。
冷房時では室外機の熱交(部屋の空気の熱を外に捨てる)、暖房時では室内機の熱交(部屋の空気を暖める)がこの役割をする熱交換器になります。
そんな放熱側熱交換器をイラストにすると、このようになります。
圧縮機から四方弁を通ってやってきた高温高圧の気体くんは、熱交に入るとすぐに温度が下がります。
どこまで下がるかというと、熱エネルギーが少なくなって、液体ちゃんに変わりたくなる温度までです。
そしてこの温度になると、熱交の中で気体くんは液体ちゃんに次々と変わっていきます。
このとき、同じ温度でも気体くんの持っている熱エネルギーは液体ちゃんの持っているエネルギーより大きいという特徴があるので、気体くんが液体ちゃんに変わる時に大量の熱を放出します。
そして、この大量に放出された熱と周りの空気を熱交換させることによって、エアコンは空気を温めていたのです。
このようにして空気と熱交換をしながら、全ての気体くんは液体ちゃんに変化します。(全ての気体くんが液体ちゃんに変わるまでは温度は同じになります。)
そして全員が液体ちゃんになった後にまた少しだけ温度が下がって、次の部品である膨張弁に向かっていきます。
膨張弁
膨張弁は、圧縮機とは逆で冷媒の温度と圧力を下げるための部品です。
膨張弁の役割をイラストにすると、下記のような感じです。
放熱側の熱交換器から出て行った液体ちゃんは、膨張弁に辿り着きます。
この膨張弁までは高温高圧の状態が続いているので、膨張弁の入り口では液体ちゃんがぎゅうぎゅうに詰まっています。
そして膨張弁の中では、冷媒が通る通路がすごく狭くなっていて、わざと冷媒を通りにくくしている箇所があります。
その狭い部分を通すことによって、今まで高温高圧だった冷媒を低温低圧に変化させます。
この時、冷媒は圧力の高いところから圧力の低いところに自然に流れて行くので、圧縮機と違って膨張弁では全く電力が掛かりません。
膨張弁がやっているのは、運転状態によって変わってくる適切な「狭さ」になるように冷媒の通り道の幅をただ調整しているだけです。
ここでは、断熱圧縮の逆である「断熱膨張」と呼ばれている方法で冷媒の温度を下げています。断熱圧縮とは逆で、断熱膨張を行うと冷媒ガスの圧力が下がるのと同時に温度も下がります。
そのため、膨張弁の手前では高温高圧だった液体ちゃんが、膨張弁の出口では低温低圧の液体ちゃんに変わります。
そして、圧力が低くなって冷媒が動きやすくなり、ここで一部の液体ちゃんは活発な気体くんに変化します。
吸熱側熱交換器
吸熱側熱交換器は、冷媒に熱を吸収させるための熱交です。
冷房時では室内機の熱交(部屋の空気を冷やす)、暖房時では室外機の熱交(外の空気から熱を奪う)がこの役割をする熱交換器になります。
そんな吸熱側熱交換器をイラストにすると、このようになります。
膨張弁からやってきた低温低圧の液体ちゃんと気体くんが吸熱側熱交に入ると、周りの空気と熱交換を開始して周りの空気から熱を奪います。
空気から見ると冷媒に熱を奪われるので、吸熱側熱交換器では空気が冷やされることになります。
冷媒の変化としては、吸熱側熱交に入ると冷媒から見ると熱エネルギーをもらえるので、そのエネルギーを使って液体ちゃんが気体くんへ次々と変わっていきます。(全ての液体ちゃんが気体くんに変わるまでは温度は同じになります。)
そして全ての液体ちゃんが気体くんに変わると、少しだけ温度が上がって四方弁へと帰っていきます。
先ほど登場したもらった気体くん⇔液体ちゃんに変わるために使われる熱エネルギーのことを、物理用語で「潜熱」といいます。
潜熱とは、液体から気体になるど、物質が状態変化を行うのに必要になる熱です。実はエアコンは、この状態変化による潜熱を上手に利用して、部屋を暖めたり冷やしたりしていたのですね。
※潜熱については別ページで詳しくお話していますので、気になる方はこちらをご参照ください。
冷媒ガスに使われている物質
ここからは、エアコンに使われている冷媒ガスの物質はどのようなものが使われているかについてお伝えします。
これは、先ほど出てきた気体くんと液体ちゃんの正体ということになりますね。
現在では、エアコンの冷媒として最もよく使われているのは、フロンの一種である「R32」という冷媒です。
フロンはその安全性と熱交換効率の高さから、家庭用エアコンにはぴったりの冷媒ガスです。
冷媒の世界では「R32」と呼ばれていますが、普通の化学では「ジフルオロメタン」という名前がついており、その化学式は「CH2F2」です。
これは、炭素に水素2個とフッ素2個が結びついた物質で、イメージとしては下記のイラストのようになります。
しかし、この「R32」という冷媒が本格的に使われだしたのは2015年ごろからで、比較的最近です。
エアコンが本格的に販売されるようになった最初のころは「R22」というフロンが主流でしたが、このフロンは太陽からの有害な紫外線から地球を守ってくれる大切なオゾン層を破壊してしまうことが分かって、2000年代に入って使用されることはほとんどなくなりました。
そこで、2000年代に入ってからは「R410A」というフロンが使われるようになりました。
このフロンは、先代の「R22」と違ってオゾン層を破壊する原因となっていた塩素原子が含まれておらず、オゾン層を破壊しないフロンとして広く使われるようになりました。
しかし、「R410A」はオゾン層こそ破壊しないものの、何と地球温暖化の主犯として扱われている二酸化炭素の約2000倍もの温室効果があり、これもやはり環境に良くないという考えになりました。
なので今度は、フロンも破壊せずに温室効果がより少ない「R32」に切り替えていくことになりました。
ただ、この「R32」という冷媒は決して新しく作られた物質という訳ではなく、実は一世代前の「R410A」という冷媒の半分は「R32」だったのです。(「R410A」は、「R32」と「R125」という冷媒が半分ずつ混ざった混合冷媒です。)
じゃあなぜ最初から「R32」が単独で使われなかったのかというと、「R32」はわずかですが燃えるという性質があったためです。
「R410A」は「R32」に非常に燃えにくい冷媒である「R125」を混ぜていたので、万が一漏れても燃える心配の無い「不燃性ガス」に分類されていました。
しかし、「R32」はわずかですが燃える可能性が有り「微燃性ガス」に分類されていました。
そのため、万が一漏れた時に絶対に燃えないとは言い切れず、本当にエアコンの冷媒に使っても大丈夫かどうか検証するのに時間が掛かったのです。
その評価が終わって、例え微燃性があるとはいっても、実際に火事や爆発などの事故につながる可能性は限りなく低いという結論に達したのが2010年を過ぎたころで、それからようやく実際のエアコンに使われるようになりました。
とはいっても、「R410A」の約2000倍よりはましですが、「R32」も二酸化炭素の約700倍というかなりの温室効果があります。
そのため、「R32」はオゾン層は破壊しない「代替フロン」という扱いで、現在でも本当に地球環境に全く影響を与えることのない「グリーン冷媒」の開発が続けられています。
エアコンの効率
これまで説明した通り、実はエアコンは空気の熱を移動させることによって冷暖房を行っています。
ではエアコンの電力は何に使われているのかといういうと、主に中に入っている冷媒ガスをクルクルと回すためのエネルギーとして使われています。
そしてエアコンの効率は、実際に使った電力に対して、どのくらいの割合で部屋の空調を行うことができたかで決まります。
近年のエアコンの進歩はすさまじく、今では何と使った電気の約4~6倍のエネルギー量の空調を行うことができます。使った電力より多くのエネルギー量の空調ができるのは、外の空気との熱のやり取りを行うことで冷暖房をするヒートポンプのなせる技ですね。
家庭の中で、エアコンは最も電気を消費する電気代がかかる大きな原因の一つとしてみられがちですが、実は使った電気の何倍も空調することができる、とても省エネ性能の高い電化製品だったのです。
※エアコンの効率については別ページで詳ししていますので、気になる方はこちらをご参照ください。
まとめ
以上で、エアコンの仕組みについての説明を終わります。まとめると、下記の通りです。
- エアコンは、ヒートポンプという技術を使って部屋の冷暖房を行っている
- ヒートポンプで熱を汲み上げることによって、低い温度の空気から高い温度の空気へ熱を移動させている
- エアコンのヒートポンプは、圧縮機・四方弁・膨張弁・室内熱交換器・室外熱交換器の5つの部品で構成されている
- 上記の5つの部品の中を、冷媒ガスが回って熱を運んでいる
エアコンの仕組みは、こんなにも奥が深かったのですね!
エアコンは単純に電力を使って冷暖房を行っているのではなく、ヒートポンプ技術を使って部屋の空気と外の空気の熱を上手に移動させて冷暖房を行ったいたのです。
まだまだこれから、生きていく上でエアコンのお世話にはなり続けると思います。もし次にエアコンを使う機会があったら、どうやってエアコンが冷暖房を行っているのかイメージしながら使ってみるのも面白いかもしれないですね(^^)
※エアコンの選び方のポイントについても別ページで詳しくお話していますので、興味のある方はこちらにも遊びにきてくださいね。
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