エコフィール。
2000年代に入ってから登場してきた、比較的新しいタイプの石油給湯器の愛称です。
このエコフィールは良く、今まで捨てていた廃熱を利用して、さらに効率よくお湯を沸かせるようになったというキャッチフレーズで売られています。
そんなキャッチコピーを見て、私はどんな仕組みでそのようなことができたのか気になったので、徹底的に調べてまとめてみました。
このページでは、そんなエコフィールの仕組みと共に、価格やデメリットについてもお話していますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね(^^)
目次
エコフィールとは?
それでは、早速ですがエコフィールとはどのような給湯器なのかについてお伝えします。
こちらです。
今まで捨ててしまっていた廃熱を回収することによって、灯油の消費量を少なくしたお財布にも環境にも優しい給湯器。
そう、エコフィールはまさにキャッチフレーズ通り、今まで捨てていた廃熱を回収して、効率をアップさせた給湯器です。
従来の石油給湯器の熱効率は約83%といったところだったのですが、エコフィールの熱効率は95%となっており、一気に12%も上がっています。
それにより、灯油の使用量が少なくて済むので、燃料代も安くなりますし、環境負荷も少なくできているのです。
エコフィールの仕組み
前章でエコフィールとはどのような給湯器なのかをお伝えしましたが、そうすると気になってくるのが、エコフィールの仕組みです。
なぜ、従来の石油給湯器と比較して大幅に熱効率をアップさせることができたのでしょうか?
ここからは、その理由についてお伝えしていきます。
まずは、エコフィールの仕組みをイラストにしましたので、こちらからご覧ください。
この中で、従来の石油給湯器に無かった部品が2つあります。その部品は、「二次熱交換器」と「中和器」です。
この2つの部品が増えることによって、従来の石油給湯器より熱効率が12%という大幅アップができました。
この中の部品の二次熱交換器では、今まで捨てていた燃焼ガスの温度の他、燃焼ガスの中に入っている水蒸気の「潜熱」という熱を回収しています。
これにより、燃焼ガスの熱を究極にまで吸収して、水を温めることができるようになりました。
そしてその際に、二次熱交換器で酸性のドレン水が発生するので、それを中和器で中和して無害にしてから捨てているのです。
エコフィールの仕組みをざっくりと説明するとこのような感じになりますが、まだ、下記のような疑問点が湧いていきます。
- なぜ燃焼ガスの中に水蒸気が含まれているのか?
- 「潜熱」とはいったい何なのか?
- なぜドレン水が酸性になるのか?
これらの疑問を、灯油の成分と燃焼ガスの成分を見ながら、更に深堀して見ていきたいと思います。
※潜熱とはどいう熱なのかについては別ページで詳しくお話していますので、興味のある方はこちらを参照ください。
灯油の成分
まずは、灯油がどのような成分でできているのかを確認します。
灯油は、化学式で書くとCnH2n+2(nは9~14)で表される、炭素9~14個と、水素20~30個が結びついた物質です。
これだけ原子の数が多いと色々な結びつき方がありますが、最も単純なのは炭素が真っ直ぐ並ぶつながり方です。
このように、石油給湯器は炭素と水素を成分とした灯油を燃やすことによって、水を温めてお湯にしています。
燃焼ガスの成分
先ほど、燃料となる灯油の成分が分かりましたので、ここからは燃焼ガスの成分を見ていきます。
燃焼とは、燃料と酸素が激しく反応して熱や炎を生み出す現象のことなので、石油給湯器の場合では灯油が酸素と結びつく反応になります。
そして、灯油が燃焼して酸素と結びつくと、主に下記の3点の燃焼ガスが発生します。
二酸化炭素(CO2)
一つ目の燃焼ガスの成分は、二酸化炭素です。
こちらは、灯油の成分のうち、炭素の部分と酸素とが結びついて生成されます。
二酸化炭素は、何か物を燃やした時にできる物質としてとても有名ですよね。
そして、昨今問題になっている地球温暖化を発生させる最も主要な原因にもなっています。
そのため、灯油の使用量が少なくなるエコフィールは二酸化炭素の排出を減らすことができ、環境負荷が少なくなるのですね。
水蒸気(H2O)
二つ目の燃焼ガスの成分は、水蒸気です。
こちらは、灯油の成分のうち、水素の部分と酸素と結びついて生成されます。
灯油の成分として水素もたくさん含まれていますので、意外ですが灯油を燃やすと大量の水蒸気が発生するのです。
そしてこの水蒸気なのですが、従来の石油給湯器では排ガスとしてそのまま捨ててしまっていました。
しかし、この捨てていた水蒸気には、「潜熱」という隠れた熱が大量に含まれていたのです。
潜熱とは、物体が状態変化をするときに使われる熱のことで、水の場合では、氷⇔水⇔水蒸気という状態変化をするときです。
この3つの中では水蒸気が最も多くの潜熱を持っていますので、水蒸気が水に変わる時には大量の潜熱が放出されます。
簡単な化学式で書くと、このような感じです。
水蒸気→水+熱エネルギー
そしてエコフィールは、新しく搭載された部品である二次熱交換器で、水蒸気を結露させて水にし今まで捨てていた大量の潜熱を回収しています。
それによって従来の石油給湯器に比べて大幅に熱効率をアップさせることができたのです。
また、その時に発生する結露した水によってドレン水が発生するので、ドレン水をきちんと排出できる構造にもなっています。
窒素酸化物(NOX)
三つ目の燃焼ガスの成分は、窒素酸化物です。
窒素酸化物の主な物質は、一酸化窒素(NO)と二酸化窒素(NO2)ですが、これらをまとめて良くNOX(ノックス)という表現をされたりします。
この窒素酸化物は、灯油を燃焼させて高温になったとき、空気中の窒素と酸素が反応してできてしまう副産物です。
そしてこの窒素酸化物は水に溶けると酸性になるという性質があり、二次熱交換器で発生したドレン水にも溶け込んでドレン水が酸性になります。
そんな酸性となったドレン水をそのまま排水すると環境に悪いので、捨てる前に中和器という部品で中和して無害にしてから、外に排出するようになっています。
また、灯油の成分の中に不純物としてわずかに窒素化合物や硫化物などが含まれており、それらが燃えてできる燃焼ガスもドレン水が酸性となる原因物質になっています。
費用面について
これまではエコフィールの仕組みについてお伝えしてきましたが、ここからはお金の話、いろいろな費用面について見ていきたいと思います。
本体価格
まずは、本体価格です。エコフィールは熱交率を高くするために潜熱交換器などの部品が追加されていますので、当然ですが従来の石油給湯器より値段が高くなっています。
どのくらい高くなっているか調べてみると、メーカーや機種にもよりますが、だいたい同じ機能のもの同士でくらべると、3~5万円ほどエコフィールの方が高いです。
本体価格だけみると、やはり高価な気がしますね。
ランニングコスト
次は、ランニングコストについてです。各メーカーのホームページによると、エコフィールにした場合の年間で節約できる灯油代は、これくらいになるとのことです。
年間で約6,700円お得(18Lポリタンク約4.4缶分)
従来の石油給湯器の年間の灯油代が約52,800円なのに対し、エコフィールにするとそれが約46,100円になり、約12%ほど灯油代が安くなります。
エコフィールでは熱効率が12%上がったので、それと同じ分だけ灯油を節約できるようになったのですね。
元が取れる?
本体の価格は高いけど、ランニングコストは安いエコフィール。そうすると気になるのが、本体価格の差額分の元がきちんと取れるのかということです。
そこで、どのくらいで元が取れるのか計算してみたいと思います。本体価格が4万円高いとすると、元が取れる時間は下記の通りになります。
40,000円÷6,700円/年=約6年
計算の結果、約6年で元が取れるという結果になりました。給湯器は普通10年以上は使いますから、長い目でみればエコフィールの方が経済的にもお得になるのですね。
デメリットについて
最後になりますが、これまでいろいろと説明してきたエコフィールのデメリットについてお伝えします。
お財布に優しかったり環境にも良かったりと良い面もたくさんあるエコフィールですが、従来の石油給湯器と比較してデメリットとなる部分が3つほどあります。
それが、こちらです。
エコフィールのデメリット
- 本体価格が高く、初期費用が高い
- ドレン水がでるので、場合よっては排水の処理が必要
- 中和器には寿命が有り、切れると交換しないといけない
一つ目は、本体価格が高いので、初期費用が高くなることです。給湯器は安い買い物ではありませんので、長い目で見れば特になることは分かっていても、目先の本体価格が高いのはやはり家計としては辛いものがあります。
二つ目は、ドレン水の排水処理です。ドレン水は無害なので、自宅の庭に設置するときなどには垂れ流しでも大丈夫ですが、マンションなど排水すること自体に問題がある場合は設置できないことがあるので注意が必要です。
三つめは、中和器に寿命があって、切れると交換しないといけないことです。中和器の中に入っている中和剤は10年くらい持つような量が入れられていますが、お湯の使用量によってはそれより早く切れる可能性があります。そうすると交換しないといけなくなるので、その際に1~2万円程度の交換費用が掛かります。
まとめ
以上で、新しいタイプの石油給湯器「エコフィール」についての話を終わります。
まとめると、下記の通りです。
- 熱交換効率は95%で、従来の石油給湯器よりも大幅にアップ!
- 従来の石油給湯器では、燃焼によって発生する水蒸気を捨てていた。
- エコフィールでは、その水蒸気に含まれる潜熱を回収することで大幅な効率アップを実現!
- 潜熱を回収する際に結露水が発生するので、ドレン水が出る。
- 燃焼ガスに含まれる窒素酸化物の影響で、ドレン水は酸性になる。
- 酸性のドレン水は、中和器で無害にされてから排出される。
- 本体価格は高いが、ランニングコストは安くなり約6年で元が取れる。
- 中和器には寿命があって、切れると交換が必要。
エコフィールの仕組み、どうやって大幅に熱効率をアップさせたのか、調べてみるととても奥が深くて面白かったですね!
もし今あなたが石油給湯器の購入を検討されていて、エコフィールの仕組みやデメリットなどを知りたいと思っていらっしゃいましたら、この記事が少しでもお役に立てましたら幸いです(^^)
※同じく新しいタイプの給湯器で、ガスを使用しているエコジョーズと、電気を使用しているエコキュートについては別ページでお話していますので、興味がある方はこちらも参照されてください。
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