1メートル。
普段私たちが使っている長さの単位の中で、最も基本的な長さの単位ですよね。
日本国内ではどこでも当たり前のように使わている、日常生活の中でもとても馴染みのある単位です。
そんな1mで気になることの一つに「普段何気なく使っている1mという長さが、いったいどのようにして決められたのか」ということがあります。
そこで今回は、そんな好奇心を満たすために1mという長さの単位がどのように定義されているのかを徹底的に調べてみました!
このページを読めば1mがどのように定義されているのか全て分かるようになっていますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね(^^)
目次
1mの定義
まずは、国際的に決められている現在の1mの定義から見ていきたいと思います。こちらです。
メートルは、1 秒の 299792458 分の 1 の時間に光が真空中を伝わる行程の長さである.
引用元:wikipedia「メートル」
そう、1mの長さは、光が真空中で1秒間に進む距離によって決まったいたのです!
※光の速さについては別ページで詳しくお話していますので、興味がありましたらこちらを参照されてください。
しかし、そのままの定義では数字の桁が多すぎていまいち良く分かりませんので、1mの定義を分かりやすくいうとこんな感じになります。
光が真空中を1秒間で進む長さの3億分の1の長さ
これで、だいぶ分かりやすくなりました。
しかし、なぜ光の速さなのか、なぜ3億分の1なのか、まだまだ気になることがたくさんあります。
そこで次の章からは、なぜ1mの定義がこのようになったのか、その経緯と理由についてさらに深堀していきたいと思います!
このような定義になった経緯と理由
それではここから、なぜ1mがこのような定義になったのか、その経緯と理由を詳しくみていきたいと思います。
初代の1mの定義(1795年~)
まずは、人類史上において、最初に制定された1mの定義からみていきたいと思います。
こちらです。
パリを通過する北極点と赤道を結ぶ子午線長の1000万分の1
1795年に、フランスで1mの長さを上記の通りにするという法律が公布され、初めて1mという距離が正式に定義されました。
子午線とは、北極と南極を通って地球を一周する線(緯度経度の縦の線)のことで、分かりやすいように図にするとこのような感じになります。
当初、最初の1mの定義は下記の3点の方法が検討されていました。
- 0.5秒の周波数を持つ振り子の長さ
- 地球の赤道の全周の長さの4万分の1
- 地球の子午線の全周の長さの4万分の1
この3つのうち、3番目の子午線の長さが形を変えて採用され、最初の1mの定義になったといえます。
赤道の長さや子午線の全周にならなかったのは、現地に出向いての正確な測定が困難なだったためです。
また、今でも地球の全周がほぼピッタリ4万kmになる理由は偶然なのではなく、このように1mの長さが地球の大きさを元にして決められていたからなのですね。
しかしながら、技術が進歩してより正確な長さが求められるようになってくると、このようにわずかな地表の変化がある地球の長さを絶対的な基準にするのは良くないと考えられるようになりました。
また、再び正確に測量しようとするとまた莫大な労力が掛かるという点も問題点として上がりました。
※子午線や赤道と関連が深い緯度経度については別ページでお話していますので、興味がありましたらこちらを参照されてください。
2代目の定義(1869年~)
初代で出てきた問題を解決するために、1869年に2代目の1mの定義が制定されました。
それが、こちらです。
アシルーヴ原器の長さ
アシルーブ原器は、先ほどの初代1mの長さがどのくらいかを示すための板状の原器で、1mの長さを確認するための副原器として使用されていました。
そして、このアシルーブ原器がそのまま副原器から昇格して1mの基準となった形です。
こうすることによって、多大な労力と費用を掛けて地球の測量を行わなくても、1mの長さが定義できるようになりました。
3代目の定義(1889年~)
更に時代が進むと、アシルーヴ原器よりも更に正確に1mの長さを決めるため、「メートル原器」という原器が新しく作製され、1mの定義は次のように変わりました。
0℃における、メートル原器に記された目盛り間の距離
物体は温度によってわずかに伸びたり縮んだりするので、まず摂氏0℃という条件が追加されました。
そして、メートル原器も摩耗しにくい材質である白金90%・イリジウム10%の合金としたり、歪みが生じないように板状ではなくX型にしたりしました。
そんなメートル原器のイラストがこちらです。
その後しばらくこのメートル原器が1mの定義となっていましたが、作製時の物理的な精度の限界や、紛失や焼損の可能性を決して0にはできないという問題があり、また新たな定義が検討されていきました。
ちなみに、同じ白金・イジリウム合金によって作られた国際キログラム原器というものもあり、こちらはごく最近である2019年まで1kgの定義として現役で活躍していました。
※1kgの定義については別ページで詳しくお話していますので、興味がありましたらこちらを参照されてください。
4代目の定義(1960年~)
4代目の定義からはこれまでとガラッと毛色が変わって、光の波長の長さを利用して1mの長さが定義されることになりました。
クリプトン86の光の波長の 1,650,763.73 倍
分かりやすいように図にすると、このような感じです。
最後、小数点以下の数値が0.73と中途半端な数値になっているのは、3代目のメートル原器の長さと正確に合わせるためです。
ちなみに、クリプトンは原子番号36番の希ガス元素で、元素の周期表の中ではここにいます。
クリプトンは反応しにくい不活性ガスで、フィラメント保護のため白熱電球の中に封入されたりしている元素です。
しかし、この定義でもまだ再現性の悪さなどの問題が残り、より不確実性の少ない定義への議論が続きました。
現在の光による定義(1983年~)
そしてその議論の結果、光による定義が採用されて、第1章でご紹介した現在の定義に落ち着きました。
ちなみに、光の速さから1mの定義を決めることに変更された理由は、下記の2点が大きな理由です。
光の速さが選ばれたポイント!
- 光の速さは、宇宙どこでも不変
- セシウム原子による正確な1秒が定義された
一つ目は、光の速さが宇宙どこでも不変であることです。
アインシュタインの相対性理論によると、光の速さは宇宙のどこで誰が見ても同じになります。
不思議なことでありますが、光源や観測者が例えどんな速度で移動していたとしても、光の速さは常に一定になるのです。
しかも、どんな波長の光でも同じ速さなので、絶対的な基準としてピッタリでした。
相対性理論とは、有名な物理学者、アインシュタインが発表した宇宙の理論です。とても難しくて難解な理論ですが、結果だけ書くと宇宙には下記のような法則があると述べられています。
- 光の速さは常に一定
- 光より速く移動することはできない
- 速く動くと、時間が遅くなる
- 重力が強くなると、空間が歪んで時間も遅くなる
- 重さとエネルギーは同じ
などです。相対性理論はGPSなどの技術にも応用されており、実用的な面でみても現代の私たちの生活にはなくてはならないものになっています。
そして二つ目は、少し意外ですが正確な1秒が定義できるようになったことが関係しています。
これは少し考えると分かりますが、光が1秒間に進む距離を知ろうとした場合、肝心の1秒の長さが曖昧だったらそちらの不確かさによって誤差が大きくなるからです。
しかしこの大きな問題も、1967年にセシウム原子を使った1秒の正確な長さが定義されることにより解決され、晴れて光の速さが現在の1mの定義として採用されました。
※1秒の定義についてはこちらのページで詳しくお話ししていますので、興味がある方はこちらのページを参照願います。
また、1mの定義が光が1秒間に進む距離の「2億9979万2458 分の 1」というものすごく中途半端な数字になった理由については、先ほど出てきたクリプトンの波長の長さの定義のときと同様に、これまでの1mの長さと同じにするためとなります。
まとめ
以上で、1mの定義についての話を終わります。まとめると、下記の通りです。
- 1mの定義は、光が1秒間に進む速さの約3億分の1
- 光が選ばれた理由は、宇宙中のだれが見ても同じ速さとなるから
- 1秒の定義を明確にできたことが、1mの定義に裏で貢献している
- 一番最初は、地球の子午線長の長さを基準にして定義されていた
- 地球一周がピッタリ4万kmなのは、メートルが元々地球の長さを基準にして作られたから
普段は全く気にすることなくいろりろな長さを測ったりしていましたが、たった1mでもこれだけ奥が深かったのですね。
これから長さを測ったりするときなどには、たまには1mの定義を思い出しながら眺めてみると面白いかもしれないですね(^^)
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