アンペア(A)。
日常生活でも使うことのある、電流に関する単位ですよね。
あいちゃんとけいくんも悩んでいますが、何気なく使っているアンペアという単位がどのように定義されているのかは、あまり気にしたことが無くて分からないところがありますよね。
そこで今回は、電流の単位「アンペア(A)」の定義について、イラストを用いながら分かりやすく解説していきます。
合わせて、過去から現在までのアンペアの定義がどのように変わっていったのかや、電流に関する豆知識についても触れていますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね(^^)
目次
アンペアの定義
それでは早速ですが、まずはアンペアがどのように定義されているかを見てみたいと思います。
現在、アンペアはこのように定義されています。
アンペアの大きさは、電気素量eの数値を1.602176634×10−19C(=A·s)と定めることによって設定する。
これが現在のアンペアの定義なのですが、定義だけ見てもとても難しくてなかなかイメージできないですね!
あなたは、こちらの定義だけでアンペアのイメージができましたでしょうか?
でも、もし難しくても大丈夫です!
次の章では、アンペアの定義をイラストを用いながら嚙み砕いて解説していきますので、あいちゃん、けいくんと一緒にさらに詳しくみていきましょう(^^)
アンペアの定義を分かりやすく
前章でアンペアの定義を見てみましたが、そのままだと非常に難しい表現になっていることが分かりました。
そこで、アンペアの定義を分かりやすく言い換えたのがこちらになります。
1秒間に、導線の断面に対して電子が約624京個流れたときの電流を1アンペアとする。
分かりやすくイラストにすると、こうなります。
ちなみに、「京」という単位は「兆」の1万倍を意味するので、624京は1兆の624万倍という数になります。
数自体はとてつもなく大きなものですが、電子が流れた数と考えると、先ほどの定義よりは断然イメージしやすくなりました。
アンペアとクーロンの関係
この章では、アンペアの定義を分かりやすくいうと、なぜ電子が導線の断面を1秒間に約624京個流れたときの電流になるのかを解説していきます。
それを分かるようになるためには、電流の単位である「アンペア(A)」と、電気量を表す単位「クーロン(C)」との関係を知る必要があります。
そして1クーロンの電気量は、次のように定義されています。
1クーロンは、1アンペアの電流が1秒間流れた時の電気量とする。
分かりやすくイラストにすると、このようになります。
また、アンペア=A、クーロン=C、秒=sとすると、簡潔な下記のような式で表すことができます。
- A=C/s
- C=As
※1秒の定義についても別ページで詳しくお話いていますので、興味のある方はこちらにも遊びにきてくださいね。
ここで、第1章ででてきた、定義をもう一度みてみましょう。
アンペアの大きさは、電気素量eの数値を1.602176634×10−19C(=A·s)と定めることによって設定する。
ここででてくる電気素量eというのは、電子1個が持つ電気量のことです。
ということは、1クーロン分の電子が1秒間に流れたら、それが1アンペアの電流ということになります。
このとき、電気素量eの単位はクーロンになっていますから、1クーロン分の電子の数を求めるのは簡単で、1クーロンを電気素量eで割れば求まることになります。
実際に計算してみると、下記のようになります。
- 1÷1.602176634×10−19=6.2415096291×1018
式の桁数が多すぎてそのままだと分かりにくいので、式をシンプルな言葉で書くとこうなります。
- 1クーロン÷電気素量e=約624京個
この式を見る、なぜアンペアの定義が電子624京個分なのか、良く分かりますね。
1クーロン分の電気量になる電子の数が約624京個なので、それが1秒間に流れると1アンペアになるというわけです。
ちなみに、電気数がきっちりとした数値ではなくこのような中途半端な値なのは、アンペアの大きさを過去の定義だったときとなるべく同じ大きさにするためです。
次章に詳しくお話しますが、昔のアンペアの定義は今と違っていたのですが、2019年にアンペアの定義は、電子1個の電気量である電気素量を元に決めた方が良いということになり、現在の定義になりました。
しかし、定義が変わったからといって、1アンペアの電流の大きさまで変わってしまったら大混乱です。
そのため、昔の定義の1アンペアの大きさに合わせるために、約624京個という数になったのです。
昔の1アンペアの定義
この章では、昔のアンペアの定義をご紹介します。
銀の析出(1908年~1948年)
初代アンペアの定義は1908年に正式採用され、下記のような定義に決められました。
硝酸銀水溶液の電気分解を行うことによって、1秒間当たり0.001118000 gの銀が析出される電流。
これは、硝酸銀中に溶けている銀イオンを電気分解すると、下記のような反応が起きて銀が析出することを利用しています。
- Ag + +e – = Ag
銀イオンが析出して銀になるとその分電極の重さが増えるので、それを計測することによって1アンペアの大きさを決めていたのですね。
導線の力(1948年~2019年)
1948年に2代目の定義に変更され、今度は下記のように導線の及ぼしあう力によって電流が定義されるようになりました。
真空中で断面積が無限に小さい円形かつ無限に長い導線を1m間隔で平行に並べたとき、2つの導線の間に1mにつき2×10-7Nの力を及ぼしあう電流。
分かりやすくイラストにすると、このようになります。
これは、導線に電流が流れると磁界が発生してお互いの導線が力を及ぼしあうので、それを利用した定義となっています。
※長さの単位「メートル(m)」、力の単位「ニュートン(N)」についても別ページで詳しくお伝えしていますので、興味がある方はこちらにも遊びにきてくださいね。
電子の数(2019年~現在)
そして、2019年にここまで紹介してきたように、電気素量eの値を正確に定めることによって電流の大きさが定義されるようになりました。
2代目の電流から発生する力による定義では、断面積が無限に小さく無限に長い導線によって定義されていたので、どうしても正確な実測ができず近似的な測定しかできないようになっていました。
そこで、より正確に電流の大きさを定義できるよう、電子の電気量をもとにした定義に変更されることになったのです。
ちなみに、電流から発生する力の定義の時には、真空中の透磁率u0の値を正確に固定して、電気素量eの値がそこから計算される不確かさを持つ値となっていましたが、電子の数の定義によってそれが逆となり、今では電気素量eの値が正確に固定され、真空中の透磁率u0が不確かさを持つ値となっています。
電流に関する豆知識!
最後の章では、これまでにお話してきた電流に関する豆知識をご紹介したいと思います。
1アンペアの電流の大きさ
まずは、1アンペアの電流の大きさがどのくらいなのかをお伝えします。
1アンペアの電流は、100Wの家電製品を動かしたときに発生する電流になります。
消費電力が100W程度の家電製品の例は、次のようなものがあります。
- 100W白熱電球
- 液晶テレビ
- マッサージチェア
なぜ消費電力100Wの家電製品が1アンペアになるかというと、電流の大きさは消費電力÷電圧になるからです。
私たちのおうちに来ている電気の電圧は100Vなので、100W÷100V=1Aになるのですね。
※ワット・ボルト・アンペアのそれぞれの計算方法についても別ページで詳しくお伝えしていますので、興味のある方はこちらにも遊びにきてくださいね。
人の致死電流
少し怖い話になりますが、人体に電流が流れるとそのショックで死に至る可能性があります。
そして、私たち人体に電流が流れたときの致死量は0.1Aと言われていますので、もし1Aの電流が流れたら確実に死にます。
人体はもともと電気が流れにくいため、そう簡単に致死量となる0.1Aの電流が流れることはありませんが、雷や電気設備による感電事故はゼロではないので、注意が必要です。
ちなみに、感電したときのダメージは電圧の大きさではなく体を流れた電流の大きさで決まります。
例えば、冬に良くくる静電気は、電圧が最大数万ボルトにもなるものすごい高電圧になるのですが、体を流れる電流がとても小さいので、痛い思いはするものの死ぬことはありません。
しかし、電圧が低くても流れる電流が多いと致命傷になってしまいます。
例えば、お風呂に浸かって全身水浸しになっていると、体がとても電気を通しやすくなってしまい、42Vという定電圧で感電死してしまうこともあります。
42Vで死ぬので、この電圧を俗に死に(42)ボルトなんて言ったりするほどです。
電気は目に見えませんから、感電しないように細心の注意を払わなければなりませんね。
電流と電子の流れの向き
物理学の中でも最もややこしいことの一つに、電流と電子の流れの向きの違いがあります。
なぜならば、電流は電子が流れることによって発生しますが、電流の向きは電子が流れる向きとは逆方向に定義されているからです。
電子はマイナスの電荷を持っているのでマイナスからプラスへと流れますが、電流はプラスからマイナスに流れることになっているのですね。
これは、まだ電気の正体が分からなかったときに、電流をとりあえずプラスからマイナスに何かが流れていると決めたことが由来になっています。
電流の流れの向きを決めた後に電流の正体が電子であることが分かったのですが、ずっと電流はプラスからマイナスに流れることにして科学や工学が発展していたので、もうそれを変えることができなかったのですね。
※電流と電子の流れの向きついては別ページで詳しくお話していますので、興味のある方はこちらにも遊びにきてくださいね。
電子の流れる速さ
電流は電子が流れることによって発生しますが、電子の流れる速さはとても遅くて、1秒間に1mm程度しか進みません。
そのため、電子の流れる速さは良くカタツムリよりも遅いと例えられています。
ただ、電子の流れる速さ自体はとても遅いのですが、電子が流れるきっかけとなる電圧は光の速さと同じスピードで伝わると考えられています。
そのため、乾電池などに豆電球をつないだときは、電子が流れるスピード自体は遅くとも、電圧は瞬時に伝わるので、スイッチを入れた瞬間に豆電球が光るのですね。
まとめ
以上で、電流の単位「アンペア(A)」の定義についての話を終わります。
まとめると、下記の通り。
- アンペアは、電気素量eの値を決めることで設定されている。
- 電気素量eは電子1個分の電気量のこと。
- 1アンペアは、1秒間に電子が約624京個流れる電流。
- 1アンペアの電流が1秒間に運ぶ電気量が1クーロンとなる。
- 電子の数が約624京個という中途半端な数字なのは、昔のアンペアの定義を同じ大きさにするため。
- 昔のアンペアの定義は、硝酸銀中の銀の析出や導線同士で及ぼしあう力の強さで決められていた。
- 1アンペアの電流の大きさは、消費電力100Wの家電製品が使われるときの電流。
かなり長くなってしまいましたが、ここまで読んでくださってありがとうございました!
このページを読んで、アンペアの定義の理解が少しでも深まって頂けたらこの上ない幸いです(^^)