エントロピー増大の法則。
これほどまでに、人間に嫌われている物理学の法則が他にあるでしょうか?
エントロピー増大の法則はその分かりにくさから色々なものに例えられていますが、よくある例えに下記のようなものがあります。
- 宇宙は、常に秩序から無秩序へと向かって変化していく
- 自然界では、常に乱雑になる方向に反応が進む
- 世界は、価値あるものから無価値なものにどんどん変わっていく
などです。
どれも、ネガティブなものばかりなのです。
偉大な宇宙の真理を表した素晴らしい法則なのに・・・、ひっ、ひどい!!
そこで今回は、宇宙の絶対的な真理の一つでもあるエントロピー増大の法則の汚名返上のため、エントロピー増大の法則を良いもので例えてみました!
他とはちょっと違う切り口からエントロピーを分かりやすく例えていますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね(^^)
目次
エントロピー増大の法則を良いもので
それでは、早速ですがエントロピー増大の法則を良いもので例えるとどのようになるかをお伝えします。
こちらです。
宇宙の平等になりたい気持ち
そう、そうなのです。
宇宙は愛と平和に満ちたとても素晴らしい空間なので、みんな平等になりたいと思っているのです。
そして、エントロピーはどのくらい平等かを示すための量で、晴れて平等になれた分だけエントロピーもアップします。
また、不平等になる方向の変化(エントロピーが下がる方向の変化)は自然には絶対起こりません。
このようにエントロピー増大の法則は「宇宙はどんどん平等になっていくよ」という真理を表した法則なのです。
エントロピーが増える例
ここからは実際に、宇宙がより平等になって、エントロピーが増える例をご紹介したいと思います!
温度が違う液体が出会ったとき
まずは、温度が違う液体が出会ったときの変化を見ていきます。
例えば、10℃の水と90℃の水が一緒になった場合です。
そのときの変化は、下記のイラストのようになります。
このように、自分たちの温度が違ってお互いが不平等であることに気づくと、仲良く同じ温度になって平等になります。
そして、平等になれた証として、その分だけエントロピーがアップします。
種類の違う気体が出会ったとき
次は、種類の違う気体が出会ったときの変化を見ていきます。
例えば、酸素(青色のイラスト)と窒素(黄色のイラスト)が一緒になった場合です。
最初は2つの空間に別れていた2つの気体ですが、真ん中の仕切りを外すと、下記のイラストのようになります。
これも、空間を平等に埋めたいという気持ちが働いてこうなります。
どの空間にも、酸素と窒素が仲良く混ざってもともと2つに分かれていた空間を共有して使います。
これは空間を平等に使えるようになったことを意味するので、これも、平等になれた証としてエントロピーがアップします。
不平等 ダメ。ゼッタイ。
先ほどの章ではエントロピーがアップするときの例を見てみましたが、その逆の変化、つまり、エントロピーが下がる方向の変化は絶対に起こりません。
先ほどの例でいうと、50℃だった水が再び10℃と90℃に分かれたり、酸素と窒素が自然に左と右の空間に偏るといった変化です。
これは、不平等になってエントロピーが下がってしまうので、宇宙が嫌がるのです。
たぶん、宇宙の掲示板には、下記のようなポスターが貼られているのではないかと思います。
本当に、宇宙は不平等がお嫌いなんですね!
エントロピーが下がる方向の変化は絶対に起きないと書きましたが、部分的にエントロピーを下げることはできます。
例えば、冷房を使って部屋の中の空気を冷やすと、部屋の空気のエントロピーは下がります。 しかし、室外機から出る廃熱やエアコンを動かす電力を使うときにエントロピーが上がって、トータルで見るとやはりエントロピーは上がります。
このように、どこかの部分のエントロピーを減らすと、他の箇所でそれ以上にエントロピーが上がるので、宇宙全体で見るとエントロピーは絶対減らないということになるのです。
※エアコンの仕組みについては別ページで詳しくお話していますので、興味のある方はこちらにも遊びにきてくださいね。また、エントロピー増大の法則は、自然界の法則の中で数少ない絶対に間違いないものと認められているものの一つでもあります。
ちなみに、自然界の法則で絶対間違い無いと認められているというのは結構すごいことで、絶対間違い無いと認められているのはこの2つしかありません。
絶対間違い無いと認められている自然界の法則
- エネルギー保存の法則(熱力学第1法則)
- エントロピー増大の法則(熱力学第2法則)
超有名なアインシュタインの相対性理論を始めとして、この2つ以外の法則や理論は、絶対間違い無いとまでは言えないという扱いです。
また、特許の管理をしている特許庁では、科学的に絶対に間違っているものは特許申請をしても受け付けないというのがあるのですが、その基準になっているのもこの2つで、この2法則に反するような発明ができたと言っても受け付けてもらえません。
ちなみに、エネルギー保存の法則・エントロピー増大の法則を破ることができる装置のことは「永久機関」と呼ばれており、永久機関には下記の2種類があります。
何もないところからエネルギーを生み出す装置(例:燃料が全く必要のない発電所)
エネルギーを自由に移動できる装置(例:海水の熱を動力にして進むことができる船)
もしこんなものが作れたらめちゃくちゃすごいことなので、人類は古くから永久機関を何とかして作れないものかと試行錯誤はしてきたのですが、結局分かったのはそういったものは絶対にできないということだけでした。
なのでもし、今あなたが永久機関なるものを作ろうと思ってがんばっていましたら、そのがんばりは絶対に報われないので気を付けてくださいね(笑)
ただし、生物にとっては困る
このように、宇宙はずっと平等になりたがっているのですが、悲しいかな、私たち人間を始めとする生物にとっては、エントロピーが増えて宇宙が平等になるととても困ります。
究極に宇宙が平等になるということは、その宇宙は何の変化も起こらない宇宙ということになります。
そんな宇宙になってしまったら、生物の体を作ることももちろんできなくなってしまうので、生物はみんな死んでしまいます。
宇宙は愛と平和の力によって平等になろうとしているのですが、私たち生物にとっては宇宙に平等になられたら困る。
だから、一番最初に導入文でご紹介した様々なエントロピー増大の法則の例えが、ネガティブなイメージなものばかりになってしまうのですね。
そう考えると、生物という存在が、なんだかとても儚くて切ない存在に感じます。
まとめ
以上で、エントロピー増大の法則を良いもので例えた場合の話を終わります。
まとめると、下記の通りです。
- エントロピー増大の法則は、宇宙が平等になりたい気持ちを表した法則
- 宇宙は、より平等になる(=エントロピーが上がる)方向に変化が進む
- より不平等になる(=エントロピーが下がる)方向の変化は自然には絶対できない
- ただし、生物にとっては、宇宙が平等になると死んでしまうので困る
今回は、エントロピー増大の法則の汚名返上のため良いもので例えてみましたが、そうすると、宇宙は平等になりたがっているけど、人間からするととても困るという、なんとも儚くて切ない結果になってしまいました。
そのため、人間から見るとエントロピー増大の法則をどうしてもネガティブな目線で見てしまうのですが、いつか、そんなエントロピー増大の法則と私たち人間が仲良くなれる日が来たら良いですね(^^)
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塩水に、塩の結晶が現れるとき、塩の結晶はエントロピーが下がった状態だし、塩水も塩分濃度が下がって行って純水に近づくのだから、そちらもエントロピーが下がる方向では? 系の全体のエントロピーを考えても、この系全体でエントロピーが上がるといえるのでしょうか?
宇宙だって、星が自然に新しくできるのはエントロピーが下がる方向でしょう。(この場合、宇宙全体としてのエントロピーはどうなるのかわかりませんが。)
ヒロミさん
こんにちは、当ブログ管理人の星野なゆたです。
コメントありがとうございます。
塩水の結晶化については、確かにそこだけ見ればエントロピーは下がっています。
しかしながら、塩が結晶になるためには水が蒸発して水分の量が減るか、
温度が下がって塩を溶かすことができる量が減らないといけないので、
塩水の外部に何ら影響を及ぼさずに結晶化の変化は起きません。
このとき、系全体といった場合は、塩水と外部(水の蒸発先または温度移動)を
含めることになるので、トータルのエントロピーは上がります。
新しく星ができる場合については、勉強不足で上手く説明できなかったので、
ネットで検索して調べてみました。
そうすると、教えて!gooのこちらのページが分かりやすいかなと
思ったので、リンクを貼っておきます。
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/19614.html
参考にされてみてください(^^)