冷蔵庫の仕組みとは?ヒートポンプという技術で中を冷やしてた!

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冷蔵庫。

戦後の日本において、白黒テレビ・洗濯機と合わせて「3種の神器」として登場して以来、私たちの生活に無くてはならないものになっている家電製品の一つですね。

こんにちは、冷蔵庫と言えばドラゴンボールのフリーザを思い浮かべる当ブログ管理人の星野なゆたです。(正確には、フリーザは冷蔵庫ではなく冷凍庫という意味ですが……)

冷蔵庫の無い生活、今では考えられないですよね。冷蔵庫のおかげで、様々な食材を腐らせずに長期間保存できています。冷蔵庫の無い時代、どうやって食べ物を保管していたのか不思議なくらいです。

そんな冷蔵庫で気になることの一つに、いったいどうやって冷蔵庫の中を冷やしているのか?ということがあります。

暖める方向であればヒーターを使えば簡単にできそうですが、冷やすってどのような仕組みでやっているのか不思議に思います。

そこで今回は、冷蔵庫の仕組みについて分かりやすくまとめてみました!

このページでは、実は本業ではヒートポンプ技術にも関わっており、熱のプロでもある星野なゆたが冷蔵庫の仕組みについて、図解を用いて詳しくお伝えしていきたいと思います(^^)

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冷蔵庫の仕組みの概要

それでは、早速ではありますが冷蔵庫の仕組みをざっくりと説明したいと思います。

冷蔵庫の仕組みを一言で説明すると、下記の通りです。

冷蔵庫の仕組み

ヒートポンプという技術を使って、冷蔵庫の中の熱を冷蔵庫の外へ捨てることによって冷やしている。

そう、冷蔵庫の中の熱を冷蔵庫の外に捨てることによって、冷蔵庫の中を冷たい空間にしていたのですね!

しかし、ここである疑問が生まれます。

冷蔵庫の外は冷蔵庫を置いてあるお部屋の温度になっているはずで、これは冷蔵庫の中の温度の方がずっと温度が低いです。

中学の理科で熱は温度が高い方から低い方へ伝わると習ったはずなので、冷蔵庫の中の熱をより温度の高い冷蔵庫の外へ捨てるというのはとても不思議に思います。

でも実際には冷えているので何かしらの技術が詰まっているのですが、「ヒートポンプ」という技術がその名前です。

ここからはそんなヒートポンプとはどんな技術なのかと、超詳細な冷蔵庫の仕組みについてお話していきます。

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ヒートポンプとは?

ヒートポンプ、普段の生活ではなかなか聞きなれない言葉ですよね。この単語がお出ましすることはまずありません。

そこでまずは、冷蔵庫の仕組みの詳細を説明する前にヒートポンプがどのような技術なかのというイメージについてお伝えしようと思います。

ヒートポンプの「ヒート」という単語は「熱」という意味なので、ヒートポンプは熱のポンプという意味になります。ポンプと言えば、水などの液体を運ぶ機械でおなじみですよね。

そして普通のポンプもヒートポンプも役割としては非常に似ているため、それぞれ比べながらヒートポンプについて説明します。

まずは、普通の水の場合。

A池とB池という池があり、B池はA池よりも高いところにあったとします。

新・A池B池

この場合、A池の水をB池に移したいと思ったら、重力で水は高いところから低いところに流れるので、何もしないで自然に移すことはできないですよね。

しかしながら、下図のようにポンプを使ってみたらどうでしょうか?

新・A池B池ポンプ付き

ポンプを使ってA池の水をB池よりも高いところに汲み上げてやれば、晴れてA池の水をB池の水に移すことができますよね。

実は、ヒートポンプ技術もこれと全く同じよう形で熱の移動を行っています。

イメージとしては、このような感じです。

新・冷蔵庫のヒートポンプ

水の場合のポンプと同様にヒートポンプを使って熱を汲み上げて、本来移動するはずのない低い温度の空気から高い温度の空気の方へと熱を移動させているのですね。

ポンプで水を汲み上げるときに水の位置を高くしていますが、ヒートポンプで熱を汲み上げるときにはその温度を高くします。

そうすると汲み上げた熱の温度よりも部屋の空気の温度の方が低くなるので、めでたく冷蔵庫の空気の熱を部屋の空気に捨てることができるのですね。

超詳細な冷蔵庫を冷やす仕組み

前章ではヒートポンプ技術とはどのような技術なのかそのイメージについて説明しました。

そこでヒートポンプとはどういった技術なのかは分かったのですが、水のポンプと違って熱を汲み上げるって実際どうやってるのか、なかなかイメージしづらいですよね。

ここからは、ヒートポンプ技術をどのように使って冷蔵庫の中を冷やしているのか、超詳細に説明していきたいと思います!

まずは、分かりやすいようにヒートポンプ技術を使って冷やす仕組みを図にしてみました。

冷蔵庫を冷やすためのヒートポンプ技術に必要な部品は、圧縮機・膨張弁・放熱用熱交換器・冷却用熱交換器の4つです。

そしてこの4つの部品が一つの回路になっていて、その回路の中を熱を運ぶ役割をしている冷媒ガスが流れて熱を運んでいるのです。

この4つの部品の中の冷却用熱交換器に冷蔵庫の空気を当てることによって、冷蔵庫の中の空気を冷やしているのですね。

それではここから、ヒートポンプに必要な各部品と冷媒の役割について、さらに詳しく説明していきます。

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各部品と冷媒の役割

それではここから、ヒートポンプに必要な各部品と冷媒の役割について、さらに詳しく説明していきます。

これを説明するときに、二人の人物「気体くん」と「液体ちゃん」に登場して頂きたいと思います。こちらです。

気体くんと液体ちゃん

気体くんは、元気で活発な男の子、液体ちゃんは、おとなしくて優しい女の子です。

実は気体くん、液体ちゃんは同じ冷媒なのですが、熱エネルギーの大小によって気体くんになるのか液体ちゃんになるのかが変わります。

例えていうなら、らんま1/2のらんまみたいなものです。(昭和生まれなのがバレる)

そしてご覧の通り、熱エネルギーが大きいときは気体くんに、熱エネルギーが小さいときは液体ちゃんになります。

これは、例え気体くんと液体ちゃんが同じ温度であっても、気体くんの持っている熱エネルギーの方が大きいということを意味します。

それでは二人の登場人物に出てもらいながら、冷蔵庫の部品の役割を説明していきます!

圧縮機

まずは、圧縮機です。

圧縮機はコンプレッサとも呼ばれており、冷蔵庫の中に入っている冷媒を運ぶための心臓部となる部品です。

まさに人間の心臓と同じように冷媒ガスを流すためのポンプの役割を果たしています。

その働きをイラストにすると、下記のような感じになります。

圧縮機(冷蔵庫用)

圧縮機の入り口では、全ての役目を終えて帰ってきた冷媒がまた圧縮機に戻ってきます。

このときの冷媒は低温低圧の気体の状態で帰ってくるので、冷媒の中は全て冷たい気体くんで満たされている状態になっています。

そしてこの帰ってきた冷媒を圧縮機で圧縮して低圧の冷媒をまた高圧に戻します。

この過程は物理学で「断熱圧縮」と呼ばれている方法で圧縮を行われているのですが、この断熱圧縮を行うと、冷媒ガスの圧力が上がると同時に温度も上がるという現象が起こり、それを利用して、冷媒ガスを圧縮して圧力を高めると同時に、冷媒ガスの温度を上げています。

そのため、圧縮機からまた旅立って行く気体くんは、エネルギーたっぷり、しかもぎゅうぎゅうに詰まった状態になっています。

放熱用熱交換器

放熱用熱交換器は、冷媒の熱を放熱するための熱交換器です。

この熱交の役割は、冷蔵庫の中からヒートポンプで汲み上げた熱を部屋の空気に捨てることです。

そして、放熱用熱交換器の役割をイラストにしたのがこちらです。

放熱用熱交換器(冷蔵庫用)

圧縮機からやってきた高温高圧の気体くんは、熱交に入るとすぐに温度が下がります。

どこまで下がるかというと、熱エネルギーが少なくなって、液体ちゃんに変わりたくなる温度までです。

そしてこの温度になると、熱交の中で気体くんは液体ちゃんに次々と変わっていきます。

このとき、同じ温度でも気体くんの持っている熱エネルギーは液体ちゃんの持っているエネルギーの方が大きいという特徴があるので、気体くんが液体ちゃんに変わる時に大量の熱を放出します。

そして、この大量に放出された熱と部屋の空気を熱交換させることによって、冷蔵庫は部屋の中の空気に熱を捨てていたのです。

このようにして部屋の空気と熱交換をしながらし、全ての気体くんは液体ちゃんに変化します。(全ての気体くんが液体ちゃんに変わるまでは温度は同じになります。)

そして全員が液体ちゃんになった後にまた少しだけ温度が下がって、次の部品である膨張弁に向かっていきます。

膨張弁

膨張弁は、圧縮機とは逆で冷媒の温度と圧力を下げるための部品です。

膨張弁の役割をイラストにすると、下記のような感じです。

膨張弁(冷蔵庫用)

放熱用熱交換器から出て行った液体ちゃんは、膨張弁に辿り着きます。

この膨張弁までは高温高圧の状態が続いているので、膨張弁の入り口では液体ちゃんがぎゅうぎゅうに詰まっています。

そして膨張弁の中では、冷媒が通る通路がすごく狭くなっていて、わざと冷媒を通りにくくしている箇所があります。

その狭い部分を通すことによって、今まで高温高圧だった冷媒を低温低圧に変化させます。

この時、冷媒は圧力の高いところから圧力の低いところに自然に流れて行くので、圧縮機と違って膨張弁では全く電力が掛かりません。

膨張弁がやっているのは、運転状態によって変わってくる適切な「狭さ」になるように冷媒の通り道の幅をただ調整しているだけです。

ここでは、断熱圧縮の逆である「断熱膨張」と呼ばれている方法で冷媒の温度を下げています。断熱圧縮とは逆で、断熱膨張を行うと冷媒ガスの圧力が下がるのと同時に温度も下がります。

そのため、膨張弁の手前では高温高圧だった液体ちゃんが、膨張弁の出口では低温低圧の液体ちゃんに変わります。

そして、圧力が低くなって冷媒が動きやすくなり、ここで一部の液体ちゃんは活発な気体くんに変化します。

冷却用熱交換器

冷却用熱交換器は、冷媒に熱を吸収させるための熱交換器です。

この熱交の役割は、読んで字のごとく冷蔵庫の中を冷やすことです。

そんな冷却用熱交換器をイラストにすると、このようになります。

冷却用熱交(冷蔵庫用

膨張弁からやってきた低温低圧の液体ちゃんと気体くんが冷却用熱交に入ると、冷蔵庫の中の空気と熱交換を開始して冷蔵庫の空気から熱を奪います。

冷蔵庫の中の空気から見ると冷媒に熱を奪われるので、冷却用熱交では空気が冷やされることになります。

冷媒の変化としては、冷却用熱交に入ると冷媒から見ると熱エネルギーをもらえるので、そのエネルギーを使って液体ちゃんが気体くんへ次々と変わっていきます。(全ての液体ちゃんが気体くんに変わるまでは温度は同じになります。)

そして全ての液体ちゃんが気体くんに変わると、少しだけ温度が上がって圧縮機へと帰っていきます。

豆知識!潜熱
先ほど登場したもらった気体くん⇔液体ちゃんに変わるために使われる熱エネルギーのことを、物理用語で「潜熱」といいます。潜熱とは、液体から気体になるど、物質が状態変化を行うのに必要になる熱です。実は冷蔵庫は、この状態変化による潜熱を上手に利用して、冷蔵庫の中の空気を冷やしていたのですね。

※潜熱については別ページで詳しくお話していますので、気になる方はこちらをご参照ください。

沸騰中の鍋
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冷媒ガスに使われている物質

最後に、冷蔵庫で使われている冷媒ガスにどのような物質が使われているかをご紹介します。

これは、先ほど出てきた気体くんと液体ちゃんの正体ということになりますね。

冷媒ガスとして使われるガスは、昔はエアコンと同じフロンが冷媒ガスとして使われていることが多かったです。

しかしながら、フロンはオゾン層の破壊や地球温暖化(フロンは二酸化炭素の1000倍くらい温室効果がある)といった側面であまり環境に良いとは言えなかったため、今ではフロンを使わないノンフロンの冷媒ガスが主流になっており、「R600a」という冷媒が良く使われています。

冷媒の世界では「R600a」と呼ばれていますが、普通の化学では「イソブタン」という名前がついており、その化学式は「C4H10です。

これは、炭素4個に水素10個が結びついた物質で、イメージとしては下記のイラストのようになります。

R600a分子モデル

そしてこのイソブタン、実は非常に良く燃えるためカセットコンロの燃料などにも使われている物質で、家庭用ガスとして有名な都市ガスやLPガスの親戚みたいなものです。

このような冷媒なので、もし漏れてしまったら可燃性が有り非常に危険というデメリットがあります。

そのため、冷媒が絶対に漏れないような構造にして製造されていたり、例え何かの拍子で万が一漏れたとしても、危険性を低くするために使う量がなるべく少量で済むような設計がされています。

まとめ

以上で、冷蔵庫の仕組みについての説明を終わります。まとめると、下記の通りです。

  • 冷蔵庫は、ヒートポンプという技術を使って中の空気を冷やしている
  • ヒートポンプで熱を汲み上げることによって、温度の低い冷蔵庫の中から温度の高い部屋の空気へ熱を捨てている
  • 冷蔵庫のヒートポンプは、圧縮機・膨張弁・放熱用熱交換器・冷却用熱交換器の4つの部品で構成されている
  • 上記の4つの部品の中を、冷媒ガスが回って熱を運んでいる

冷蔵庫の仕組み、分かって見たらとても面白かったですよね!

人類の歴史上、何か暖めるということは火を使えば簡単にできるのでとても昔から行われてきましたが、何かを冷やすということはとても難しく、近年になってヒートポンプ技術が開発されるまでできないことでした。

今では冷蔵庫を使って簡単に物を冷やすことができますが、これも全てヒートポンプ技術のおかげだったのですね!

こんな素晴らしい技術がある時代に生まれたことに感謝しながら、これからは冷蔵庫を使っていきたいですね(^^)

おまけ:冷蔵庫で部屋を冷やすのは無理!?

昭和の時代の笑い話で、「エアコンが部屋についていない苦学生が夏の暑さに耐えられないときに、冷蔵庫を開けっぱなしにして部屋を冷やそうとひらめいて、実際にやった。」というのがあります。

このひらめき、一見すると革命的なひらめきのように感じますが、世の中そんなに都合良く行くわけはなく、冷蔵庫を開けっぱなしにしても部屋を冷やすことは無理です。

それどころか、逆に部屋の温度を上げてしまう原因になります。

これは、ヒートポンプ技術の特徴として「必ず冷却する熱量よりも放熱する熱量の方が多くなる」という特徴があるためです。

なぜこのようなことが起きるのかというと、圧縮機で冷媒を圧縮する際にどうしても余計な熱量を冷媒に与えなければならず、放熱側の熱交でその分も一緒に放熱しないといけないためです。

図にすると、下記のような感じになります。

冷蔵庫で部屋を冷やすのが無理な理由

そのため、冷蔵庫を開けっぱなしにしても何も良いことはありません。

ただより多くの電気代が掛かってしまうだけなので、冷蔵庫の扉を開ける時間はなるべく短くなるようにしましょうね。

ちなみに、エアコンもほとんど冷蔵庫と同じ原理で動いているのですが、エアコンが実際に部屋を冷やしたり、冷房と暖房を切り替えたりできるのは、機器が室内機と室外機に分かれていることと、もう一つ四方弁という部品が冷媒回路に追加で使われているのが理由です。

※エアコンの仕組みについては別ページで詳しくお伝えしていますので、気になる方はこちらもご参照ください。

エアコン冷房

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