電流出力。
温度や湿度・圧力など、世の中にはいろいろな種類のセンサがありますが、電流出力はそのセンサの出力方法の一つです。
アナログ出力方式のセンサでは、大きく分けて電流出力と電圧出力の2種類がありますが、このうち好まれて使われているのが電流出力を使った方法です。
電流出力はノイズの影響を受けにくかったり、センサからのリード線が長くても電流は変わることはないので影響がないなど、誤差の少ない高精度の出力が得られるためです。
このようにたくさんのメリットがある電流出力なのでが、これをデータロガーに繋げて計測しようとすると、ある問題が発生します。
それは、データロガーでは電流を計測することができないので、直接データロガーにリード線をつないでも計測できないという問題です。
そのため、電流出力をデータロガーで計測するためには、それを電圧出力に変換してやらなければなりません。
このページでは、そんな電流出力を電圧出力に変換して、データロガーで計測する方法について詳しく解説していきます。
目次
電流出力を電圧に変換する仕組み
それでは早速ですが、電流出力を電圧に変換するための仕組みを説明していきます。
まずは、その方法を一言で表すとこのようになります。
センサの出力と電源の間に抵抗を入れて、その間の電圧を測定する
分かりやすいように図にすると、このようになります。
図中の矢印は、電流の流れを表しています。
プラス側の電源から電流が流れてセンサ、抵抗を通り、マイナス側の電源へ到達します。
電流出力では、センサが出力に応じた電流にコントロールすることによってセンサの値を出力します。
例えば、レンジが0~5MPaの圧力センサをつないでいたら、センサは0MPaのときに電流4mAを、5MPaのときに20mAの電流が流れるようにコントロールします。
そして電流から電圧に変換するために抵抗を設置します。
図中の、センサ出力とマイナス電源の間に入っている抵抗です。
例えここに抵抗が入ったとしても、電流出力のセンサでは電流を一定にコントロールする力を持っているので、同じ出力電流を流し続けることができます。
ちなみに、このような自身の持っている抵抗値と電圧の測定値から電流を計測する抵抗のことを、「シャント抵抗」と呼んでいます。
シャント抵抗というと何かとてもカッコよく聞こえて特別な抵抗のように感じますが、そんなことはなく全然普通の抵抗で、使い方によってそのように呼ばれているのですね。
使用する抵抗と電圧出力の値
ここからは、実際に使用する抵抗の数値と、その時に出力させる電圧の数値を見ていきます。
ここでは、中学生の理科で習ったオームの法則(電流、電圧、抵抗の関係式)が大活躍します。
オームの法則は、電圧E、抵抗R、電流Iの記号をとって、「えりちゃんの法則」なんて習った方も多いのではないでしょうか?
※オームの法則については別ページで詳しくお話していますので、興味のある方はこちらにも遊びにきてくださいね!
オームの法則の公式では「電圧=電流×抵抗」となりますから、抵抗の値が分かっていれば、この抵抗前後の電圧差を図ることによって、電流出力を電圧の値として読み取ることができるのです!
そしてこのシャント抵抗は、250Ωの抵抗が最も良く使われています。
それは、250Ωの抵抗を使うと、電圧に変換された出力が1-5Vとなり、データロガーで良く使われる5Vのレンジにピッタリと収まるためです。
これは、「電圧=電流×抵抗」の公式を使うと簡単に計算できますね。
- 4mA×250Ω=1V
- 20mA×250Ω=5V
こうして、晴れて4-20mAの電流出力を1-5Vの電圧出力に変換することができました!
これなら、データロガーでばっちり計測することが可能ですね。
ちなみに、電流出力の下限が0mAではなく4mAなのは、出力の下限と断線を区別するためです。
もし下限を0mAにしてしまうと、センサの出力で0になっているのか、電源が入っていなかったりどこかが断線して0になっているのかが分かりませんからね。
下限が4mAであれば、出力が0mAとなっていたら、センサの出力ではなくどこかに異常があるのがすぐに分かるというわけです。
計測時の配線の方法
前章で電流出力を電圧出力に変換してデータロガーで計測するための仕組みについてお話しましたが、ここからは、実際に配線するにはどのようにしたら良いかについてお話します。
センサが一つのとき
まずは最も基本的な、一つのセンサを使った場合の接続例をご紹介します。こちらです。
図の実線の部分に、プラス側からマイナス側に向かって電流が流れています。(黄色の矢印が電流の流れを表しています)
データロガーでは抵抗前後の電圧を測れるようにしないといけないので、その部分の端子台と接続して電圧を計測できるようにします。
こうすることによって4mA-20mAの電流出力の変化を1-5Vの電圧へ変換でき、めでたく、データロガーを用いての計測ができるようになります。
センサが複数あるとき
今度は、センサが複数あるときの配線方法です。
計測したいデータは何種類もある場合も多いかと思いますが、そんなときは各センサを並列につなげば一つの電源で複数のセンサ出力を同時に計測することができます。
この時の配線の例は、下記のようになります。
この方法で、電源の出力できる消費電力を超えたり、使っているリード線の電流の許容量を超えない限りは、いくらでも並列の数を増やすことができます。
その数は電源の性能やリード線の太さにもよりますが、センサ一つ辺りの電流は最大で20mAで消費電力も非常に小さいため、一般的には10~20個くらいであれば全く問題なく並列つなぎで計測が可能です。
計測に必要な道具
前章で電流出力を電圧出力に変換するための配線方法をご紹介しましたが、最後は、実際に計測するために必要な道具をご紹介していきたいと思います!
データロガー
まず必要になるのが、データロガーです。
データロガーが無かったら、せっかくの出力を記録する手段がありませんからね。
そしてそんなデータロガーでおススメの商品がこちらです。
昔はデータロガーはどれも何十万もする高いものばかりでしたが、こちらのグラフテック社製のデータロガーは10万ほどとロガーにしてはかなり格安の値段で購入できます。
このデータロガーは私も実際に仕事で使っていますが、使い勝手も非常に良く、本当におススメのデータロガーです。
スイッチング電源
次は、スイッチング電源です。
スイッチング電源とは、その名の通り電源をスイッチ(変換)する道具です。
小型センサの電源は、DC10~30Vくらいであることが一般的ですので、家庭用のAC100Vをそのまま使うことができません。
そのため、AC100Vの電圧を、適切なDC電圧に変換する必要があります。
そこで活躍するのが、このスイッチング電源。
接続するだけで、家庭用のAC100Vの電圧をDC電圧に変換してくれます。
センサの計測で最も良く使われるのは、電源電圧がDC24Vのスイッチング電源です。
この電源電圧であれば、大抵のセンサに使用可能です。
ただし、センサの種類によって電源電圧は異なりますから、自分の使っているセンサの仕様を確認した上で、正しい出力電圧のスイッチング電源を選ぶ必要があります。
シャント抵抗
次は、シャント抵抗です。
電流出力を電圧に変換するためには、抵抗を入手しなければなりません。
計測器のシャント抵抗は、市販品としては下記の品物があります。
この品物は、先ほどご紹介したデータロガーのメーカーであるグラフテックが販売している、まさに電流出力を電圧出力に変換するために作られた立派なシャント抵抗です。
でも、値段としてはかなり割高。
ただの250Ωの抵抗に、その値段は高すぎな気がします。
もう少し、安い値段でシャント抵抗を作りたいものです。
そんなときは、汎用品の抵抗を使って250Ωを作りましょう。
汎用品の抵抗で250Ωという数値は無くて単品で確保するのは難しいですが、抵抗を直列や並列につなげば、250Ωの抵抗をつくることができます。
※合成抵抗の計算方法は別ページで詳しくお話していますので、興味のある方はこちらにも遊びにきてくださいね。
例えば、こちらのような1kΩの市販の抵抗を、4本並列につなげば250Ωの抵抗を作ることができます。
こうすれば、メーカー純正の立派な製品を使わなくても、市販の激安な抵抗でシャント抵抗を作ることができます。
シャント抵抗は出力を1-5Vにするために250Ωの抵抗が広く使われていますが、250Ωでないといけないわけではありません。例えば100Ωを使ったとすると、4mAのときの電圧が0.4V、20mAのときの電圧が2Vになりますから、そのレンジに合わせてデータロガーをスケーリングすれば計測することが可能です。
ただ、抵抗の値が大きくなる方向のものを使うときは注意が必要です。抵抗が大きすぎてセンサが電流をコントロールできるレベルを超えてしまったり、抵抗の発熱量が大きくなったり、データロガーとの内部抵抗との差が小さくなって出力電圧の降下が起きてしまったりするためです。
端子台
端子台がなくてもリード線を直接つなげばできなくはないのですが、断線やショートの可能性もあって危険ですし、きちんと計測できないかもしれません。
そして見た目も、美しくありません。
そこで便利なのが、下記のような端子台です。
端子台を使えば、安全かつ美しく、電圧変換のためのリード線の接続を行うことができます。
まとめ
以上で、4mA-20mAのアナログ電流出力を、1-5Vの電圧出力に変換して、データロガーで計測するための方法についての話を終わります。
まとめると、下記の通りです。
- 電流出力はノイズやリード線長による電圧降下の心配が無く、正確な出力ができる
- そのため、センサの出力は電流出力が好んで用いられる
- 電流出力を電圧に変換するためには、シャント抵抗を使用する
- シャント抵抗は、抵抗値250Ωの抵抗が良く用いられる
- シャント抵抗を用いて、4-20mAの電流出力を1-5Vの電圧出力に変換する
- データロガーを1-5Vのレンジに設定し、その値を記録する
電流を電圧に変換するなんてなんか難しく感じますが、実は中学生の理科で習う知識で十分理解できる、とても簡単な仕組みだったのですね!
これでもう、電流出力のセンサを使うのも怖くありません。
あなたもぜひノイズに強い電流出力のセンサをばっちり使用して、バンバン仕事や実験を進めてみてはいかがでしょうか?
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