顕熱と潜熱
どちらも同じ熱という言葉が使われている、なんか似たような言葉ですよね。
熱という言葉が使われているので熱に関する言葉なのかということは何となく分かりますが、どう違うのかと言われると、なかなか分からないところ、ありますよね。
そこで今回は、顕熱と潜熱がいったいどういったものなのかを分かりやすくまとめてみました!
このページでは、顕熱や潜熱がどういったものなのかを、分かりやすいイラストと共に解説していきますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね(^^)
目次
顕熱と潜熱
それでは早速ですが、顕熱と潜熱がどのような熱なのかをお伝えしたいと思います。
こちらです。
- 顕熱=温度変化に使われる熱
- 潜熱=状態変化に使われる熱
一言でいうとこんな感じで、顕熱は温度変化、潜熱は状態変化に使われる熱となります。
しかしながら、さすがにこれだけでは具体的にどのような熱なのかはまだイメージしづらいですよね。
そこで次章からは、顕熱と潜熱について更に深堀りして見ていきたいと思います!
顕熱の詳細
まずは、顕熱の詳細からお伝えします。
そもそも熱とは何か?
顕熱がどのようなものかを考える際に、まずは熱とはそもそもどのようなものかについてお伝えします。
実は、熱は原子の振動の大きさの違いによって発生しています。
全ての物質の元となっている原子(水素や炭素など)は、その場にピタッと止まっている訳ではなく、常に振動しています。
そして、その振動が小さいと温度が低い、大きいと温度が高いという関係があります。
原子の熱振動の増大に使われる熱
先ほど述べた熱振動のことを考えると、顕熱は原子の熱振動の変化に使われる熱ということができます。
具体的には、水の温度が10℃から80℃に上がったり、空気の温度が30℃から20℃に下がったりするのが顕熱による温度変化となります。
潜熱の詳細
次は、潜熱の詳細についてお伝えします。
固体・液体・気体の状態
潜熱は第1章で紹介したように状態変化(物質が固体・液体・気体と状態を変えること)に使われる熱ですが、そもそも固体・液体・気体がどのような状態なのかからまずは説明したいと思います。
固体の状態
固体の状態は、分子が常に決まった位置にある状態です。
それぞれの分子は熱振動で動いてはいますが、お互いの位置が変わることはありません。
液体の状態
液体の状態は、分子同士が手をつなぎならではありますが自由に動ける状態です。
そのため、体積は変わりませんが、形は自由に変わることができます。
気体の状態
気体の状態は、分子が自由に飛び回っている状態です。
お互いの分子の影響を受けず自由に動き回れるので、形も体積も自由に変わることができます。
※固体・液体・気体については別ページで詳しくお話していますので、気になる方はこちらへも!
分子間力と熱振動
もう一つ、潜熱を理解する上で知っておきたいことの一つに、分子間力と熱振動がありますので、それを説明していきます。
分子間力は分子のくっつきたい気持ち
分子間力は、分子がくっつきたいという気持ちです。
分子間にはお互いがくっつくような性質があり、この力があるため物質は気体から液体や固体になります。
分子がくっつこうとする力である分子間力は、大きく分けて下記の4種類があります。
- イオン間相互作用
- 水素結合
- 双極子相互作用
- ファンデルワールス力
これらの力は上の方ほど強い力になりますが、力の源は同じで+の電荷と-の電荷が引き合う静電気力です。
熱振動は分子の離れたい気持ち
先ほどの顕熱のところで出てきた熱振動ですが、これは温度と同時に、分子同士の離れたい気持ちの強さも表しています。
熱振動が大きくなるほど、分子はお互いに離れて自由に動きたい気持ちになります。
状態が変わる時に必要な熱が潜熱
これまでのことを踏まえながら、もう一度潜熱は物質の状態変化に使われる熱というのがどいうものなのかを説明していきます。
例えば、氷(固体)の状態のものを温めて熱を加えると、分子の熱振動が大きくなって温度が高くなっていきます。これは、顕熱変化のことですよね。
そしてある一定の温度まで温度が上がると、分子同士のくっつきたい力である分子間力より熱振動による離れたい力の方が大きくなって状態変化が始まります。
氷(固体)から水(液体)になる変化であれば、分子がお互いに位置を変えない状態から、手をつなぎながらでも自由に動き回れるようになります。
水(液体)から水蒸気(気体)になる変化であれば、今までつないでいた手を放してお互いが自由に動けるようになります。
この状態を変えるときにもエネルギーが必要で、そのエネルギーこそが潜熱ということになります。
※物質の状態変化については別ページで詳しくお話していますので、気になる方はこちらへも!
水での例
ここからは、顕熱と潜熱について、水での例を見て行きたいと思います。
まずは、こちらのグラフをご覧ください。
これは、水の温度変化と状態変化について、横軸が熱エネルギー(難しい言葉で言うと、エンタルピーといいます)、縦軸が温度としたときのグラフです。
氷の状態だったものに熱を加えると、顕熱変化が発生して氷の温度が上がります。
0℃に達すると氷が溶けはじめ、熱は氷が水になるための潜熱として使われます。この間、温度は上がりません。
氷が全て溶けて水となるとまた顕熱変化に戻って、今度は100℃まで水の温度が上がります。
100℃になると今度は水から水蒸気になるための潜熱変化が起き始め、熱エネルギーはまたそのために使われます。
そして全ての水が水蒸気に変わったあと、また温度が上がり始めます。
潜熱が活躍しているところ
最後に、潜熱が活躍しているところをご紹介したいと思います。
日常生活ではあまり聞きなれない潜熱ですが、実は身近なところで隠れて大活躍しているのです。
飲み物の中の氷
一つ目は、飲み物の中の氷です。あなたも、何度もお世話になっているのではないかと思います。
飲み物の中に氷を入れておくと、氷が全て溶けるまでは0℃のままの状態が保たれて、冷たくて美味しい飲み物を飲むことができます。
これは、氷が溶けるまでは、熱が氷から水に変わるための潜熱として使われるためです。
そのおかげで、温度が上がる顕熱変化が抑えられ、ずっと冷たい状態でいられるのです。
汗
二つ目は、汗です。暑いときに汗をかくという能力は、実はとてつもなく便利な人間の能力だったのです。
汗をかいて肌に水が付くと、その水が気化して蒸発していきます。
これは温度が100℃にならなくても、水は空気中にある程度なら気体の状態である水蒸気として存在できるという特徴があるためです。
そして、100℃の時に蒸発するのに潜熱が必要なのと同じで、常温で気体になるときも潜熱が必要になります。
この時、その潜熱を体から奪っていくので、体からするとどんどん熱を奪われ冷やされることになります。
このようにして、人間は暑いところで長時間運動しても、汗をかいて自分の体を冷やしてオーバーヒートすることなく活動できるようになっているのです。
また、夏に湿度が高いときに不快になるのは、空気中に元々水蒸気が多くなっていてなかなか汗が蒸発しなくなるので、この潜熱による冷却効果があまり効かなくなるためです。
エアコン
三つめは、エアコンです。実は、エアコンは潜熱が大活躍している家電製品なのです。
エアコンがなぜ部屋を冷やしたり暖めることができるかというと、エアコンの中に入っている冷媒ガスが気体になったり液体になったりすることによる潜熱変化を利用し、熱を運んでいるからです。
その冷媒の潜熱変化を利用した技術であるヒートポンプという仕組みを使って、冷房の時は部屋の空気を外の熱い空気に捨て、暖房の時は外の冷たい空気から熱を奪って部屋の中を温めています。
今の時代、もはやエアコン無しの生活は考えれなくなっていますから、潜熱には本当に感謝ですね!
※エアコンの詳しい仕組みについては別ページで詳しくお話していますので、気になる方はこちらへも!
台風
四つ目は、台風です。日本にもやってくる恐ろしい自然災害の一つですが、台風も潜熱が大きく関係しているものの一つです。
実は、あの巨大なパワーを持った台風のエネルギー源になっているのが「潜熱」なのです。
台風は熱帯の海の上、水蒸気をたっぷり含んだ空気がある場所で発生します。
その水蒸気が上昇気流によって上昇したとき、空気の温度が下がって空気の水蒸気を含める量が減り、その限界を超えると、水蒸気から液体である水滴に変化します。(いわゆる雲です)
そしてこの時に、水蒸気から水になるので大量の潜熱をエネルギーとして大気に放出します。
すると、水の潜熱によって暖められた周りの空気は更に強い上昇気流となって、やがて強大な風を発生させます。
このように、時として潜熱は我々にとって脅威になることもあるのです。
※台風が潜熱をエネルギーとしてどのように使っているかは別ページで詳しくお話していますので、気になる方はこちらへも!
まとめ
以上で、顕熱・潜熱についての話を終わります。
まとめると、下記の通りです。
- 顕熱は、温度変化に使われる熱
- 潜熱は、状態変化に使われる熱
- 温度の正体は、原子の熱振動の大きさの違い
- 潜熱は、身近なところでも大活躍している
顕熱と潜熱、詳しく見てみるととても面白かったですね!
身近なところをよく見てみると、顕熱や潜熱が活躍しているところ、他にもたくさんありそうです。
そのようなものを探しながら熱についてのことを考えると、より楽しくなるかもしれませんね!
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