台風。
日本にも夏から秋にかけてやってくる、恐ろしい自然災害の一つです。
台風と言えば、ものすごい風と雨を思い浮かべますが、あの強大なエネルギーはいったいどこから来ているのでしょうか?
あれだけのパワーのエネルギー源ですからさぞかしすごいことかと思いきや、実はそのエネルギー源は意外なたった一つのあれだったのです!
このページでは、そんな台風のエネルギー源について徹底解説していきます!
目次
台風のエネルギー源
それでは、早速ですが台風のエネルギー源をお伝えします。こちらです。
水蒸気が水に変わる時に放出される潜熱
台風のエネルギー源は、実はこのたった一つだったのです。
ちなみに潜熱とは、物質が固体⇔液体⇔気体のような状態変化をする際にやり取りされるエネルギーのことです。
※潜熱については別ページで詳しくお話していますので、興味のある方はこちらもご参照ください。
しかし、初めてこれを知ったときは、なかなかピンと来ないところありますよね。
台風と言えば、何もかもをなぎ倒してしまいそうな猛烈な暴風を思い浮かべます。
あれだけ強大なエネルギー源が水蒸気が水に変わる時に放出される潜熱のエネルギーだけなんて、にわかには信じがたいところがあります。
そこで、水蒸気が水に変わる時に放出される潜熱エネルギーが実は結構すごいということについて次章からお伝えしたいと思います。
潜熱エネルギーのすごさ
それではここからは、潜熱エネルギーのすごさについてお話していきたいと思います。
まずは、空気温度が30℃のときの1kgの水蒸気が水に変わる時に放出される潜熱のエネルギー量について確認したいと思います。
こちらです。
このように、水蒸気1kgが水に変わる時には、2431kJ(キロジュール)というエネルギーが放出されます。
※エネルギーの単位「ジュール」については別ページで詳しくお話していますので、興味のある方はこちらもご参照ください。
そして、この2431kJというエネルギーでできることがこちらになります。
そう、この通りたった水蒸気1kgが水に変わっただけで、重さ1tもある車を高さ248mまで持ち上げたり、時速70kmまで加速させることのできるエネルギーが放出されるのです。
水蒸気に含まれる潜熱のエネルギー量は、実はとんでもない量のエネルギーであることがお分かり頂けるのではないかと思います。
そして台風が生まれ故郷である暖かい日本の南海上では、それこそもう莫大な量の水蒸気が空気の中に含まれている訳です。
当然ながら、そこに含まれるエネルギーの量もとてつもない量になります。
これが、台風のあの強大なパワーのエネルギー源になっているのです。
潜熱のエネルギーが風に変わる仕組み
次は、潜熱のエネルギーが風に変わる仕組みをお伝えします。
上記の通り、台風のエネルギー源は潜熱なのですが、潜熱のエネルギーは「熱」という言葉が入っている通り、熱エネルギーになります。
そして台風で発生する風は空気の運動エネルギーが増加したことによって暴風になっているので、台風のどこかでこの熱エネルギーが運動エネルギーに変換されている過程があるはずです。
この章では、その仕組みについてお話します。
まずは、一言でその仕組みを言う下記の通りになります。
水蒸気をたっぷり含んだ空気が上昇気流によって上昇し雲になる際に、潜熱エネルギーを放出し空気が暖かくなり、上昇気流がさらに加速して風速が上がっていく。
台風は、このような仕組みで潜熱の熱エネルギーを空気の運動エネルギーに変えています。
ただ、言葉だけだと少し分かりにくいところがありますので、これを図を用いながらもう少し詳しく説明していきたいと思います。
暖かい空気は上昇、冷たい空気は下降する
まずは、空気の特性として、周りの空気よりも暖かければ上昇する、冷たければ下降するという特徴があります。
これは、空気は温度が高ければ高くなるほど軽くなる(密度が小さくなる)という性質があるためです。
周りの空気より暖かければ軽くなって上昇、冷たくなれば重くなって下降するというわけです。
少し難しい話になりますが、周りの空気より暖かいか冷たいかを判断する基準として「温位」というものが良く使われます。温位とは、その空気を圧力1000hPa(ほぼ標高0mくらい)の地点まで移動させたときにどのくらいの温度になるかという指標です。
空気は上昇すればするほど気温が低くなるという性質があるので、地表は上空よりも必ず温度が高くなります。それにも関わらず空気が上昇したり下降したりすることがあるのは、この温位の違いによって生み出されているのです。
潜熱エネルギーによって更に暖かくなる
上記のように周りの空気より暖かい空気があるとその空気は上昇し、やがて大きな上昇気流となっていきます。
台風が発生するような暖かい海の上の空気は大量の水蒸気が含まれているのですが、そのような空気が上昇すると、やがて水蒸気が凝縮して水滴になり、雲が発生します。
そしてこの水蒸気が雲になる時に、大量の潜熱エネルギーが放出されて、もともと周りの空気より暖かかった空気をさらに暖めます。
そうすると、上昇気流が更に加速されて、空気がどんどん上へ上へと上昇していきます。
そう、この瞬間が、まさに水蒸気の熱エネルギーが空気の運動エネルギーに変わった瞬間です。
このようにして、台風は水蒸気の潜熱によって得られた熱エネルギーを空気の運動エネルギーに変えていたのですね。
中心に向かって暴風が吹く
上記のように、台風の中心付近の雲の中ではどんどん上昇気流が発生して、空気が上へ上へと送り込まれます。
すると、その下はどうなるか?
どんどん空気が上に送り込まれるので、空気が少なくなっていって気圧が落ちていきます。
これは、良く天気予報で聞く気圧を表す指標であるhPa(ヘクトパスカル)の数値がどんどん小さくなっていくことを意味します。
※圧力の単位「パスカル」については別ページで詳しくお話していますので、興味のある方はこちらのページもご参照ください。
そうするとここだけ空気が薄くなってしまうので、それを補うように周りから大量の空気が中心に向かって吹き込むようになります。
そう、この地表付近の中心に向かって吹き込む風こそが、我々が台風が来た時に見たり感じたりする暴風だったのです。
上の図では、分かりやすいように空気が台風の中心に向かって真っすぐ吹き込んでいるようなイラストにしていますが、実際の台風では台風の中心を反時計周りに回るような風向きの暴風が発生します。
このような風は「傾度風」と呼ばれており、気圧差によって中心に吹き込もうとする内側への力と、外側へ働く力である遠心力とコリオリ力(地球の自転によって起こる力)が吊り合うことによって発生します。
※台風の風向きについては別ページで詳しくお話していますので、気になる方はこちらにも遊びにきてくださいね。
勢力の維持には、27℃以上の海水が必要
このように水蒸気の潜熱をエネルギー源にしている台風ですが、勢力を維持するためには27℃以上の海水が必要だと言われています。
海水温が27℃未満になってしまうと、海水から蒸発する水蒸気が足りなくなって、エネルギー不足になってしまうのです。
また、台風が上陸すると急速に勢力が衰えてしまうのも、陸上からではエネルギー源となる水蒸気が供給されなくなってしまうからというのが理由です。
まとめ
以上で、台風のエネルギー源についての話を終わります。
まとめると、下記の通りです。
- 台風のエネルギー源はたった一つ!
- そのエネルギー源は、水蒸気が水に変わる時の潜熱
- 潜熱のエネルギーは、想像以上に大きい
- 水蒸気が水滴となって雲になるとき、潜熱エネルギーが放出される
- 潜熱によって暖かくなった空気が上昇気流となり、風のエネルギーに変わる
- 強力な上昇気流で失われてい行く空気を補うようにして、暴風が発生する
あんな強力なエネルギーを持っている台風のエネルギー源が実はたった一つで、水蒸気の持っている潜熱だけだったのには、とても驚きました。
次に台風情報などで台風に触れる機会がありましたら、そのエネルギー源を思い出しながら見てみるのも良いかもしれませんね!
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