台風、ハリケーン、サイクロン。
どれも、一度は聞いたことのある言葉ですよね。
このうち台風は、毎年日本にもやってくるのでおなじみのものだと思いますが、ハリケーンとサイクロンは、いざ聞かれるとどのようなものか良く分からないところ、ありますよね。
そこで今回は、この3つの違いを図解で分かりやすくご紹介したいと思います。
合わせて、これまでに発生した記録的な台風、ハリケーン、サイクロンの話や、似ているけど全然違うものであるトルネードやモンスーンについても触れていますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね(^^)
目次
台風、ハリケーン、サイクロンの違い
それでは、早速ですが台風、ハリケーン、サイクロンの違いについてお伝えします。
実はこの3つは基本的には同じもので、違うのはたったこれだけです。
【中心のある場所】
以上です。言葉で見るとめっちゃ簡単ですね!
でも、これだけではザックリしすぎていますので、もう少し詳しく説明していきましょう。
台風、ハリケーン、サイクロンはどれも熱帯地方で発生する低気圧の一つで、発生の仕方や嵐の現象としては全く同じものになります。みんな同じ、日本でいうところの台風なのですね。
それではここから、それぞれどの場所にあったらそのように呼ばれるのかについてお話します。
まずは分かりやすく図にすると、下記の通りとなります。
ざっくりいうと、日本の近くにあるものが台風、アメリカの近くにあるものがハリケーン、インドやオーストラリアの近くにあるものがサイクロンといった感じですね。
台風には上記の通りいろいろな名前がありますが、台風は赤道上では絶対に発生しないという特徴があります。その理由は、台風が渦を巻くために必要な「コリオリの力」という力が0になるからです。
「コリオリの力」は地球の自転によって発生する渦を作るために必要な力なのですが、赤道上ではこの力が全く働きません。そのため、赤道上では雲が渦を巻けないため、台風ができることはないのですね。
※コリオリの力については別ページで詳しくお話していますので、興味のある方はこちらにも遊びにきてくださいね。
それぞれの定義の詳細
では、台風・ハリケーン・サイクロンそれぞれのより明確な定義を更に深堀してみていきましょう。
台風
まずは、台風からです。台風の定義は、下記の通りとなっています。
- 東経100度から東経180度までの北半球に中心がある
- 中心付近の最大風速が17.2m/s以上
場所については東経100度から東経180度、北半球太平洋の西側にあるものと定義されています。ご存知の通り、我々が住んでいる日本もこの地域に含まれていますよね。
また、場所以外にももう一つ定義があって、中心付近の最大風速が17.2m/s以上というのがあります。
ちなみに、最大風速が17.2m/s未満のものは熱帯低気圧と呼ばれており、風速がそれを超えると晴れて台風に昇格となっているのですね。
※台風の定義については別ページで詳しくお話していますので、気になる方はこちらにも遊びにきてくださいね。
ハリケーン
次は、ハリケーンの定義です。
- 西経180度(=東経180度)から大西洋までの北半球に中心がある
- 中心付近の最大風速が32.7m/s以上
場所については西経180度、北半球太平洋の東側にあるものと、北半球大西洋にあるものと定義されています。ハワイを含むアメリカ、メキシコ、キューバなどがこの地域に含まれます。
また、もう一つの風速の定義は、中心付近の最大風速が32.7m/s以上となっています。
最初にこれら3つの違いは中心のある場所だけとお伝えしたのですが、それ以外にも実はここだけ違いがあって、昇格するための風速がちょっと違うのですね。
ちなみに、最大風速が17.2m/s未満のものはトロピカル・デプレッション、17.2m/s以上32.7m/s未満のものはトロピカル・ストームと呼ばれています。
良く日本語の熱帯低気圧の英訳として、トロピカル・ストームが用いられたりしますが、これは間違いで、トロピカル・ストームとなった時点でもう台風と同じ強さになっているのですね。
そしてハリケーンになったその時点で、日本でいうところの「強い台風」と同じくらいの勢力になっています。
※「強い台風」がどのくらいの勢力の台風なのかは、こちらのページで詳しくお話しています。
サイクロン
最後は、サイクロンの定義です。
- 東経100度以西のインド洋または南半球の太平洋に中心がある
- 中心付近の最大風速が17.2m/s以上
場所については、インド洋は南北問わずと、太平洋の南半球にあるものと定義されています。インドやバングラデシュ、オーストラリアなどがこの地域に含まれます。
風速の定義は、こちらは台風と同じく17.2m/s以上となっています。
風速については、台風とサイクロンが17.2m/s以上と同じで、ハリケーンだけ違って32.7m/s以上となっているのですね。
普段私たちに馴染みのある北半球の台風は渦が反時計周りで回っていますが、南半球で発生したサイクロンは渦が北半球とは逆の時計周りになります。
これは、台風の渦の発生要因となる地球の自転によって発生するコリオリ力という力が、北半球と南半球では逆方向の力として働くからです。
南アメリカ沖では発生しない?
最初にご紹介した、場所を示す世界地図で空白になっていることに気づかれた方もいらっしゃるかもしれませんが、南半球の南アメリカ沖は、太平洋側・大西洋側共に台風が発生しない地域になっています。
これは、南極からやってくる寒流の影響で海水の温度が上がらず、台風の発生に必要な暖かい海水の温度にならないからというのが理由です。
この地域で万が一発生した場合は、太平洋側ではサイクロンと命名される地域に含まれますが、大西洋側で発生した場合は名前すら明確に決まっていません。
越境台風
これまで紹介した、台風やハリケーンの中には、中心の場所がそれぞれの境界を飛び越えてしまう強者も中には存在し、そのような強者は「越境台風」と呼ばれています。
ここでは、そんな越境台風についてお話します。
ハリケーンから台風になる場合
北半球太平洋の西経領域で発生した台風が東に進んで経度180度線を越えて東経領域に入ると、ハリケーンから台風に変わります。
頻度としては割と多く、平成25年~27年では3年連続でこの越境台風が発生しました。
そんな越境台風が日本までやってくることはあまりないのですが、過去2回だけ越境台風が日本に上陸したことがあります。それがこちらです。
- 平成9年台風19号(オリーバ)
- 平成27年台風12号(ハロラ)
どちらも西経領域であるハワイ近海で発生してハリケーンになったあと、東進して台風に変わってはるばる日本までやってきました。
ハワイ近海でできた台風が日本にまでやってくるなんて、スケールの大きさを感じますね!
台風からサイクロンになる場合
南シナ海で発生した台風が東経100度線を越えてインド洋に達すると、台風からサイクロンに変わります。
こちらは、陸地であるマレー半島を飛び越えないといけないので頻度としてはあまり多くありませんが、2019年1月に発生した台風1号が、21年ぶりに越境サイクロンとなりました。
ちなみに、台風が発生する地域では貿易風という東風が吹いており台風は西に進むため、台風→ハリケーンや、サイクロン→台風という逆パターンはほぼありません。
また、第1章の豆知識でお話したように、赤道上では台風は渦を巻けなくなるため、赤道を越境する台風は絶対に発生しません。
国際名称は変わらずに引き継がれる
台風やハリケーンには、発生した時点で国際名称が付けられますが、そちらの方は越境しても名前が変わらずにそのまま引き継がれます。
例えば、先ほどの「平成9年台風19号(オリーバ)」の「オリーバ」の部分が国際名称に当たります。
この国際名称はハリケーンに付けられる名前で普通台風には付けられないのですが、発生したときにはハリケーンだったため、越境後もこの国際名称が引き継がれた形になっています。
記録的な台風、ハリケーン、サイクロン
この章では、これまで過去に発生した、記録的な台風、ハリケーン、サイクロンをご紹介したいと思います。
記録的な台風
◆昭和54年台風第20号(チップ)
1979年10月に発生した台風で、最盛期には中心気圧が観測史上世界最低となる870hPaを記録した台風です。
この台風は日本にもやってきて各地に甚大な被害を与え、死者・行方不明者合わせて115名という尊い命が失われました。
◆平成25年台風第30号(ハイエン)
2013年11月に発生した台風で、日本にはやってきませんでしたがフィリピンに高潮などの甚大な被害を与えた台風です。
この台風は、先ほどの昭和54年の台風20号が記録した史上最低気圧を更に下回る860hPaまで下がっていた可能性があると言われており、これが正式に認められれば、この台風が歴代最低気圧となるかもしれません。
◆伊勢湾台風
1959年9月に発生した台風で、近代日本に上陸した台風の中で、犠牲者数5,098人という最悪の被害をもたらした台風です。
特に被害が大きかったのは大規模な高潮が発生した伊勢湾沿岸の愛知県、三重県であり、「伊勢湾台風」と呼ばれることになりました。
記録的なハリケーン
◆ハリケーン・カトリーナ
2005年8月に発生したハリケーンで、アメリカで史上最悪となる1080憶ドルの被害を発生させたハリケーンです。
ルイジアナ、ミシシッピ、アラバマの三州を直撃し、堤防の決壊や沿岸低地の高潮による浸水が多発して史上まれにみる大災害となりました。
◆ハリケーン・パトリシア
2015年10月に発生したハリケーンで、872hPaというハリケーンの史上最低気圧を記録しました。
このハリケーンはアメリカの太平洋側で発生してメキシコ中部に上陸したのですが、上陸後急速に勢力が衰えたため、幸いにも人的被害はほとんどありませんでした。
◆ハリケーン・ウィルマ
2005年10月に発生したハリケーンで、882hPaという大西洋で発生したハリケーンの中では史上最低気圧を記録しました。
同じ年に発生した前述のカトリーナよりも最盛期の勢力は上でしたが、被害額は294憶ドルとカトリーナの4分の1程度となっています。
記録的なサイクロン
◆ボーラ・サイクロン
1970年11月にインド洋で発生したサイクロンで、死者数が最大50万人とも言われる近代の自然災害の中でも最悪クラスの犠牲者を出したサイクロンです。
このサイクロンは勢力自体はさほど強いものでななかったのですが、サイクロンに対して脆弱な地域であったボーラ地方(現在のバングラデシュ)を直撃して大規模な高潮が発生した結果、逃げ場の少ない標高の低い島々で多くの犠牲者を出す結果となってしまいました。
◆サイクロン・パム
2015年月に南西太平洋で発生したサイクロンで、最盛期には中心気圧が896hPaという最強クラスまで発達したサイクロンです。
バヌアツやツバルといったオーストラリア北東にある島国に大きな被害をもたらしました。
◆サイクロン・ウィンストン
2016年2月に南西太平洋で発生したサイクロンで、史上最大のサイクロンとも呼ばれています。
特に被害が大きかったのはフィジーで、日本で最強ランクに分類される猛烈な台風の基準である最大風速54m/sをはるかに上回る、風速80m/s以上の状態で直撃し、島全体に壊滅的な被害をもたらしました。
トルネードとモンスーンは別物!
ちなみに、ハリケーンやサイクロンと似たような言葉でトルネードとモンスーンというのもありますが、実はこの2つは台風とは全く別物です!
最後に、これら2つの言葉の意味をお伝えしたいと思います。
トルネードは竜巻
トルネードは、竜巻のことです。
竜巻は風の強さは台風よりも上ですが、風の吹く範囲はせいぜい数百メートルといったところなので、大きさとしては台風とは比べものにならないくらい小さいですね。
モンスーンは季節風
モンスーンは、季節風という意味です。季節風とは、その季節にある一定の方向から吹いてくる特徴的な風のことですね。
特に有名なのが東南アジア地域に吹いているモンスーンで、日本に梅雨が発生する原因にもなっています。
まとめ
以上で、台風、ハリケーン、サイクロンの違いについての話を終わります。
まとめると、下記の違いです。
- この3つは基本的には同じ自然現象で、熱帯地方の強い嵐
- 中心のある場所によって、名前が変わる
- 日本付近にあるのが台風
- アメリカ付近にあるのがハリケーン
- インド、オーストラリア付近にあるのがサイクロン
- 似たような言葉のトルネード、モンスーンは全く違う意味
台風、ハリケーン、サイクロンの違い、ゆっくりと見てみると、意外と単純なものだったのですね。
これでもう、この3つの違いがどのように違うのか、悩むことはありませんね(^^)
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